デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

別れた女房も担ぎ出すスタローンの底力。 クリード 炎の宿敵

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『お前の名前は?』
『…クリード
『お前の名前は?』
クリードだ!』

 

意識の有無を確認するためのレフェリーの誰何(すいか)ですが、見事な名乗りになっています。ラノベの口上風に言うなら、

 

『我が名はクリード。偉大なるアポロ・クリードの血を引く者にしてロッキー・バルボアの弟子、現WBC世界チャンピオンだ。何ぴとたりとも我をマットに沈めることはできない!』

 

みたいな感じでしょうか。

 

クリード 炎の宿敵」(2018年/スティーヴン・ケイプル・Jr監督)

 

スピン・オフと言いつつ、しっかりロッキー・ザ・ファイナルの後日談として機能した前作「チャンプを継ぐ男」の続編。

同時にその後の「ロッキー4」でもあります。アポロ・クリードを屠り、故国でロッキーに屈した男、イワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)が影の主役。

冒頭映し出されるイワンの後ろ姿。薄暗闇の中に浮かぶシルエットだけではっきりイワンと分かる存在感。

そこはロシアではなくウクライナ。寒々とした景観の中、トレーニングに励む息子ヴィクターとトレーナー、イワン。

目標はロッキーの愛弟子アドニスクリードを倒してベルトを奪い、失った過去を埋め合わせる事。

挑戦表明の為アメリカへ。そして「旧友」ロッキーの店へ。過去に執着するイワンに

『昔の話だ』
(That's like a million years ago. )

と返すロッキー。しかし、イワンの応えは

『俺にとっては昨日だ』
(Like yesterday to me.)

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『俺は全てを失った。故郷も、尊厳も、妻もウクライナの野犬を見たことがあるか?何日も食い物を得られず、人々は唾を吐きかける。奴らには何もない。家も。ただ生き残るためだけに戦うんだ』

I lose everything. Country. Respect. Wife. You ever see stray dogs in Ukraine? They go for days with no food. People spit on them. They have nothing. No home. Only will to survive, to fight.

正直、不満はあります。音楽の使い方はヘボい(ロッキーにラップは合わん)し、編集がイマイチなせいで盛り上がりに欠けるし、何より本来主役であるべきアドニスマイケル・B・ジョーダン)とヴィクター(フロリアン・ムンテアム)に主役オーラがまるでない。

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まあ、スタローンとラングレンが放つ熱量が半端ないので仕方ないと言えば仕方ないのですが、では若手二人だけで物語が牽引できたかと言えばやはりNO。

それでも過去のロッキーシリーズに絡むあれやこれやが糾える糸のように紡がれる様は快感以外の何者でもなく。特にドラゴ(と息子ヴィクター)を捨てた妻・ブリジット・ニールセンの登場にはびっくり仰天。

イメージ最悪な役なのによく受けたなあ。恐るべし、別れた女房も担ぎ出すスタローンの底力。

こうなるとやっぱり作って欲しいですねぇコブラ2」

 

  

 

 

 

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