多分、人間には2つの種類があります。
星を持つ者と持たざる者。
大きな星を持つ者は本人がそれと意識しなくとも周りが自分に都合よく動き常にアタリを引く(もしくはハズレをギリギリで回避する)人生を歩む。
持たざる者は常に岐路の分岐に失敗し、裏切られ、失い、悔恨だけが残る。
前者の代表が長州力、後者の代表が谷津嘉章のような気がします。
失ったもの…信用、金、友人、情熱、そして右足。
「さらば闘いの日々」
(2019年11月宝島社より発売/谷津嘉章著)
クレジットは谷津嘉章著になっていますが、正確には谷津の著作ではありません。
地の文は別の人、つまり、聞き手・書き手が谷津の発言をそれっぽくまとめているインタビューとドキュメンタリーの中間のような本です。
このまとめた人の名前が無いのがこの本最大の弱点なのですが…。
アマレスの五輪代表から鳴り物入りで新日本プロレスに入団し、ジャパン、全日本、SWS、SPWF、WJと漂流し続けた谷津嘉章の貧乏くじプロレス人生。
人生に「もし」はありません。しかし、谷津の人生は「もし」の連続。
- もし、入団前にプロレスがエンターテイメントだと知っていたら。
- もし、新日本ではなく全日本に行っていたら。
- もし、維新軍に組み込まれなかったら。
- もし、全日本に三沢・川田が入ってこなかったら。
- もし、ドン荒川がSWS田中社長にプロレスの正体を教えなかったら。
- もし、もっとプロレスを愛することができたら。
勿論、自身の選択ミスもありますが、常に裏で誰かのケツを拭かされている(しかも感謝されない)汚れ役の印象。
正直、ちょっと視点を変えれば谷津に対する恨み辛みをぶつけたい人も沢山いるんじゃないかと思います(特にSPWF時代)。
とは言え、プロレス界を忌避しながら、「(義足の)海賊レスラーというギミックでもいいからもう一度リングへ」と願う谷津にプロレスに対する屈折した愛憎を見てとる事はできました。
…にしても(既に故人ではありますが)メガネスーパー田中社長は罪な人だったんだなあ…。