マクベスから芸能人、一般市民に至るまで。
「魔女・預言者(現代に於いては霊媒師、呪術師、教祖)」の言葉を真に受けて常識外れの行動に出ちゃった人は枚挙に暇がありません。
実業家ウィリアム・ワート・ウィンチェスターの未亡人、サラ・ウィンチェスターもその一人。
ウィンチェスター…そう、「西部を開拓した銃」として名高いレバーアクション・ライフル「ウィンチェスターM1873」を生み出した“あの”ウィンチェスターです。
その二代目ウィリアムは1866年に愛娘を生後一か月で失い、1881年には自らも他界。
夫と娘を続けて失った未亡人サラはテンパリまくって霊媒師に相談。ご神託は…
『お前の会社が作った銃で殺されまくった人々の霊が復讐の機会を狙っている。呪いじゃ!今すぐ家を出て西へ行け。そこで彼らの霊を慰める家を建てよ。決して建築の手を止めてはならぬぞよ』
迷惑千万(笑)。
サラはコネチカット州からカリフォルニアへ移住。1884年から1922年に死ぬまでの38年間、24時間365日休むことなく増改築を繰り返し、無秩序に膨れ上がった化け物屋敷を作り出します。
この奇怪な屋敷を人々はこう呼びました。
"The Most Haunted House in America"―アメリカで最も呪われた屋敷、と。
「ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷」(2018年/ピーター・スピエリッグ&マイケル・スピエリッグ監督)
観光名所として実在する「ウィンチェスター・ミステリー・ハウス」を題材にしたオカルト・ミステリー。
昼夜を問わず“悪霊ホイホイ”な家を作り続ける大株主サラ(ヘレン・ミレン)の奇行に業を煮やしたウィンチェスター社経営陣は、『あの婆、精神鑑定して株もぎ取っちゃる』大作戦を敢行。
派遣されたのは私生活で色々あってサラ同様テンパリまくっている精神科医エリック・プライス(ジェイソン・クラーク)。
『恐怖は頭の中だけにある』と豪語して屋敷に乗り込んだエリックでしたが、着いた早々この世ならざる者の歓待を受け…。
実在のホラースポットが舞台(しかも家モノ)なので正統派ゴシック・ホラーを期待していたのですが、
- 家は結局セット(作りが複雑かつひとつひとつの空間が狭いのでカメラを持ち込めず、オーストラリアにセット組んで撮影)。
- ドン!わーびっくり!なコケ脅し演出が多く、求める怖さからは1万光年。
の2点が災いして今ひとつふたつみっつな仕上がり。
それでもポスターガイスト祭りと1906年のサンフランシスコ地震を合わせ技にしたクライマックスはそこそこ派手で見応えがありました。
サラと同居している姪マリオン役でセーラ“ジェサベル”スヌークが。
このお屋敷が複雑怪奇な構造になった原因は、武家屋敷・忍者屋敷のような裏道・抜け道・回り道があることに加え、「建築計画が存在しない(行き当たりばったりに増改築を繰り返している)」事があるらしいのですが、その(映画的)理由が明示されておりました。
サラを依り代に悪霊が憑依して「自動書記」のような形で次に作る部屋のデザイン画を描かせていたんですね。
真偽はさておき、絵的にはいい解釈だったのではないかと思います。
機会があれば覗いてみたいですね。本物のウィンチェスターハウスを。
★ご参考
①最近のヘレン・ミレンと言えば…
②スピエリッグ兄弟と言えば…
③セーラ・スヌークと言えば…