『考え抜いた結論なの?』
(Have you actually thought this through at all?)
『まさか』
(Of course NOT.)
ジョージア州からメイン州にかけての14州にまたがる約3,500kmの長距離自然歩道「アパラチアン・トレイル」。
年間訪問者400万人。内2000人が全区間の1シーズン内踏破に挑戦するも成功率は10%。
散歩者には微笑み、踏破者には牙を剥くアパラチア山脈。
挑むはロバート・レッドフォード(撮影時推定78歳)&ニック・ノルティ(同74歳)。70代の大冒険。
「ロング・トレイル!」
(2015年/ケン・クワピス監督)
原作はノンフィクション作家ビル・ブライソンの紀行本『ビル・ブライソンの究極のアウトドア体験 北米アパラチア自然歩道を行く』。
但し、ビル・ブライソンが友人スティーヴン・カッツと共にアパラチアン・トレイルに挑んだのは40代の時。
この本が刊行された1998年、ロバート・レッドフォードは自身とポール・ニューマンのために本企画を立ち上げました。
しかし、映画が形になる前にポールは他界。
熟成を重ねた企画は相方にニック・ノルティを迎えてより無謀な老人賛歌に。
『なんてこった!20代に戻りたいよ』『50代でもいい』
(Holy shit. I wish I was still 20.)(I wish I was still 50.)
ちょいと訳あってヒッチハイクでズルする二人。
ニック・ノルティが遅咲きだったせいか、レッドフォードの方がかなり年長のイメージがありましたが、4歳程度しか差がなかったんですね。
口下手で人づきあいが苦手(要するにコミュ障老人)のブライソン(レッドフォード)。
紀行作家としては著名ですが、最近は他人の本の序文くらいしか。
半引退状態で家族と穏やかに暮らすも、退屈。満たされぬ日々。
思い立ったアパラチアン・トレイル踏破。
しかし、妻(エマ・トンプソン)は大反対。何とか翻意させようと、熊が、遭難が、腐乱死体が、と悪条件を並べますがブライソンの信念動かず。
「せめて二人で」という条件を引き出したブライソンですが、そんな自殺プロジェクトに相乗りしてくれるモノ好きはおらず…了解してくれたのは40年前に喧嘩別れした悪友スティーヴン・カッツ(ノルティ)只一人。
しかし、やってきたカッツはアル中が祟ってボロボロ。とてもトレイルなんぞできるとは思えず。
それはブライソンも同様で、スタート地点から400mで二人揃って息が上がって最初の休憩。
ぐぬぬ、クソガキめ!
主人公が70代という大鉈振るう原作改変が作品に味わいをもたらしました。
若い時は同じ馬鹿をやって過ごしたのに、いつしか成功者と落伍者に分かれた二人。
時間という溝はあっても決して仲たがいしないのは老境のゆとりという奴でしょうか。
大きなドラマはなく、ただ老人二人が文句垂れつつ、昔話に花を咲かせながら歩くだけ。
そこがいい、と思えるのは私も歳を取ったからかもしれません。
おまけ
宿屋の女主人役でメアリー・スティーンバージェンが。
推定62歳。滅茶キュート。
----------------------------------------------------------------------
★本日のTV放送【21:00~日本テレビ/金曜ロードSHOW!】