『では野狐丸(やこまる)、お前に弁明の機会を与えよう』
『私の名前はスクィーラだ!』
『ケモノであるお前に町より下されたありがたい名前を不遜にも否定するのか!?』
『わたしたちはケモノでも奴隷でもない!』
『ケモノでないとしたらお前は何なのです?』
『…わたしたちは人間だ!』
「偽りの神に抗え」―初めて見た時は陳腐に思えた本作のキャッチコピーですが、終わってみればそこに込められた意図に少なからぬ衝撃を覚えずにはおれません。
時は現代文明が滅んで千年後。場所は茨城県神栖市。千年後の呼び名は神栖66町。
「新世界より」
(2012年10月~2013年3月放送/石浜真史監督)
2011年、人類はサイコキネシスを科学的に立証。多くの超能力者が生まれましたが、能力者を弾圧しようとする非能力者との対立が激化。
無限の能力を解放して殺戮マシーンと化した能力者が暴走した結果、あっという間に社会秩序は崩壊。人口激減。
世界中でアクセラレータが大暴走。
以後五百年に及ぶ争乱期、更に五百年に渡る戦乱期を経てようやく現在の社会体制を構築。
人類は千年に及ぶ恐怖と反省から二度と災禍に見舞われないよう、ありとあらゆる保険を掛けました。
歴史の隠蔽、記憶の改竄、マインドコントロールと遺伝子レベルで組み込まれた同族攻撃に対するストッパー、そして不穏分子の早期発見と排除。
サイコキネシスは呪力と呼ばれ12歳を迎えた男女に発現。
人間は労働力確保のため、遺伝子操作で人工的に作り上げた生き物バケネズミを使役。呪力を扱う人間をバケネズミたちはこう呼んでいました。
―神様、と。
主人公は神栖66町で生まれ、12歳で呪力を手にした少女・渡辺早季。
呪力はある日突然、ポルターガイストの洗礼と共にやってくる。
彼女と呪力の訓練を行う全人学級のクラスメイトらの成長過程…第1部12歳、第2部14歳、そして第3部26歳…大河ドラマです。
12歳の夏、キャンプに行った早季たちは、先史文明が遺した「国立国会図書館つくば館」の端末機械である「ミノシロモドキ」と遭遇。
ミノシロモドキから、呪力がもたらした文明の崩壊、そして現在の社会が作られた経緯といった、禁断の知識を得てしまい…。
ミノシロモドキ。正式名称:Panasonic自走型アーカイブ・自律進化バージョンSE-778HΛ。2129年までに出版された約4000万冊の本をデータ化して記録している400人力禁書目録。
この時出会った「塩屋虻コロニー」のバケネズミ、スクィーラ(後に人間から「野狐丸」の名前を頂く)。
世界の歪みと矛盾。いつ自分たちにも牙を剥くか分からない社会機構。
14歳。リーダー格だった青沼瞬が失踪。やがて早季らの記憶からも抹消され…。
更に不良品として排除されることになった気弱な伊東守が脱走。秋月真理亜と共に行方不明に。
早季を取り巻く世界が静かに、しかし音を立てて瓦解していきます。
早季が26歳になった年の夏祭りの夜、バケネズミが人間に叛乱(ショゴスだ!)。
呪力で容易に鎮圧できると思われましたが、バケネズミの後ろに控えていたのは、先天的に攻撃抑制および愧死機構が機能しておらず、呪力で同種である人間への攻撃を躊躇なく行い、殺戮の限りを尽くし続ける精神病質者「悪鬼」。
先史文明を滅ぼした悪魔が再び。その瞳には守の、その髪には真理亜の面影が…。
ざっくりまとめると「AKIRA」×「ナウシカ」×「狂気山脈」。
これをもう1回やろうとして失敗したのが「ダーリン・イン・ザ・フランキ(以下略)。
OP無し+タイトル、クレジットの書体も色も出し方も回によって異なる特殊仕様。
色々と突っ込みたいところはあるのですが、まぁいいか、という気にさせる野心作ではありました。
★ご参考
★今夜のTV放送【23:00~BSプレミアム】
★関連してこれらも。