『また殺し屋の話ですか?勘弁してくださいよ。殺し屋なんて実際にいやしねぇんだから。大体、日本じゃ殺し屋商売が成り立つ訳がないですよ。警察もあれば法律もある。第一、ピストルを持つ事自体が銃砲等所持令第1条って奴に引っかかるんです。違反すれば3年以下の懲役ですからな』
朗らかに語るこの男、石岡国四郎(垂水悟郎)の仕事は殺し屋の素質を持つ人間を見抜き、育て、一人前の殺し屋として世に送り出す事。
そう、殺し屋はいるんです。
「紅の拳銃」(1961年/牛原陽一監督)
どいつもいつも世の中が面白くて仕方がねぇような顔をしていやがる。つまらん。お、あいつは…。
目がいいぞ。見事なロクデナシの目だ。
やさぐれたロクデナシの目を持つ男、中田克己。演じるは赤木圭一郎21歳。
21歳!?
大人だ…。かつてこの国にも成人した立派な男と女がいたんですねえ…
早速、石岡は中田をヘッドハンティング。英才教育を施します。
得物はコルト45。この時代の拳銃に注文つけるのも野暮ってもんですが、シリンダーがスイング・アウトするコルト45と言うのは違和感あるなあ。
コルト45と言えばピースメーカーかガヴァメントでしょう。ダブルアクションができるリボルバーでファニングの練習というのも…。
ここ、今撮ったら相当マニアックなシーンになるでしょうねえ。少なくとも銃の解説に透視図は使わんでしょ。まずは分解・組み立てから。
でも気になるのはここだけ。お話はご都合主義すら心地よい運命と運命のサンドイッチ・ラリアット。
香港のドンを消して商流の独占を図る神戸の黒幕。神戸の黒幕を消して香港との直取引を画策する東京の組織。そして、やられたと見せかけて大阪に乗り込んできた香港のドン。
その誰もが必要としているのが…腕利きの殺し屋。
中田がバーで助けた女(白木マリ)は神戸の黒幕の情婦。石岡には盲目の妹(笹森礼子)が。彼女の目を治せるかもしれない医者が神戸に。大阪に乗り込んできた香港のドンの妻はかつて中田が捨てた女(吉行和子)。
運命のいたずらがぶつかり弾かれまたぶつかり…本当に盤面を回しているのは誰だ。
薄幸の競演トリプルヒロインズ。
赤木圭一郎のロクデナシぶりがいつしか爽やかな余韻に変わる佳作です。
本作が公開されたのは1961年2月11日。その3日後、撮影所敷地内で赤木の乗っていたゴーカートが大道具倉庫の鉄扉に激突。前頭骨亀裂骨折に伴う硬膜下出血のため、2月21日、帰らぬ人となりました。
葬儀が行われた2月23日は白木マリ24歳の誕生日。キツかったでしょうねえ。
★60年代の殺し屋が赤木圭一郎なら70年代は、
★古今東西の殺し屋を眺めるならば、
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追悼:ジョージ秋山
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漫画家・ジョージ秋山先生がお亡くなりになりました(なっていました)。
5月12日。77歳。
秋山先生と言えば「浮浪雲」ですが、個人的には
- アシュラ
- ザ・ムーン
- 銭ゲバ
でございます。ご冥福をお祈りいたします。