『ゾッドは信頼できない。
問題は…地球人も信頼できないことです』
Zod can't be trusted. The problem is,
I'm not sure the people of Earth can be either.
人は理解できないものを本能的に恐れます。
異能の力を抱えた宇宙人の苦悩。
「マン・オブ・スティール」
(2013年/ザック・スナイダー監督)
クリストファー・リーヴ版の「1」と「2」を足して、アッパーな要素を全部削ぎ落としたスーパーマン誕生篇。
良くも悪しくも監督(「ドーン・オブ・ザ・デッド」)、原案(クリストファー・ノーラン@メメント)、脚本(デヴィッド・S・ゴイヤー@ザ・クロウ/ダークナイト)の生真面目さが前面に出ています。
遊びがない冒険ものは息苦しいなあ…。
鉱物資源の採りすぎで滅亡一直線の惑星クリプトン。話し合いばかりの元老院ぶち転がして謀反を起こした将軍ゾッド。一縷の望みを託して生まれたばかりの息子カル=エルを遠く離れた惑星・地球に飛ばす決意をしたジョー=エル(ラッセル・クロウ!)。
ゾッドは捕えられファントム・ゾーンに幽閉されたものの、直後クリプトンは木っ端微塵。カル=エルは無事、地球にたどり着き、養父母の元でクラーク・ケントとして…
という立ち上がりはオリジナルと一緒。
クリプトンの描写がやたらスターウォーズっぽくてスーパーマンらしさ皆無。
音楽はハンス・ジマーですが、やっぱジョン・ウィリアムズのあのテーマ曲がないとテンション上がりませんね。
少年クラークは自身の大きすぎる力に困惑。
たとえ人助けであっても周囲の目には「化け物」に…。
養父母はケヴィン・コスナーとダイアン・レイン。「父」の概念を煮〆たようなケヴィンと「母」なるものの象徴のようなダイアンが実に素敵。
巨大ツイスターを前に己の命を犠牲にしてでも、
クラークに能力を使わせまいとしたジョナサン。
で、まあ色々あって、地球を改造してクリプトン再興を目論むゾッドと地球人に味方するジョー=エルの一騎打ちになるのですが、なんかね…。
とんでもなくド派手な立ち回りを演じているのに爽快感がかけらもありません。
もう兎に角ビル壊しすぎ、人殺しすぎ。
スーパーマンなら倒れてくるビルを受けめて立て直すくらいの事してほしいのに、飛んできたタンクローリーひらりとかわしてビル大爆発。炎を背負ってどつきあい。
高層ビルはドミノ倒しのように倒壊し、3.11詰め合わせ状態。
何か幼年期にいじめっ子を殴り返せなかった鬱憤を晴らしているようにしか見えません。
街がまるごと瓦礫の山。自然災害とかゴジラとかなら「まぁしゃーねーか」と思いますが、人災(?)ですからねえ。
ここまでやっておきながらフィニッシュホールドが「捩じ首」ってのも…。
今回、新設定として追加されたのは、クリプトンは人間の計画生産を行っており、人はあらかじめ自分の役割・使命を「設計されて」生まれてくるという事。
何かすげーマトリックスっぽい
(ローレンス・フィッシュバーンとハリー・レニックスが出ているから余計)。
労働者は労働者、指導者は指導者。そこには選択もチャンスもありません。
ジョー=エルは数百年ぶりに人から生まれた自然出産児(選択無限)。
逆にゾッドは戦士として、コマンダーとして生まれ育ったため、それ以外の生き方を知りません(多分)。
ゾッドが地球を滅ぼしてでもクリプトンを再興しようとしているのは、それが彼の使命だからで個人的な野望とかではないんですね。
そう思うとゾッドもあながち悪人とは言えないような(どんどん爽快感から遠ざかっていく…)。
最後にクラークは『世界中の情報が集まる場所で働きたい。危険な場所へ行きたがっても詮索されない職場でね』とか言い垂れてデイリー・プラネット社に。
ああ、そう繋げるのか、と感心はしましたが、その目的だったら商社か戦場カメラマンの方がいいんでないかい。
ただ、出迎えたロイスが『Welcome to The Planet.』と言ったのは良かったですね。
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★本日6月30日はポール・マザースキー監督の命日(2014年)。
ちょっと私とは交わらない系の監督さんですが、1本だけ取り上げていました。
★ついでに言えば本日6月30日は、ラッシャー木村、テリー・ファンク、マイク・タイソンの誕生日。
お誕生日に追悼記事採録というのも趣味が悪いですが、木村さんなら許してくれるでしょう。