このビジュアルでこのタイトル。誰がどう見ても首都警アナザー・ストーリーですが、かすりもしません。
ブラジルの政治腐敗を「お題目など知った事か!」と力任せに薙ぎ倒す正義と報復の二重奏。
「ケルベロス 紅の狼」
(2018年/グスタヴォ・ボナフェ監督)
以前「ゼロ・アワー」をご紹介した時にベネズエラの医療崩壊に触れましたが、お隣ブラジルでは医療に回すべき公金20億ドルを州知事が着服。医療現場は野戦病院状態。
国家特殊武装班に所属するミゲルは、綿密な準備を経て公邸の家宅捜索に踏み切りましたが、証拠を得ることが出来ずに知事は釈放。
直後、ミゲルの娘を白昼何者かが狙撃(少女射殺シーン見たのってカーペンター版「要塞警察」以来な気がする)。
駆け込んだ病院では「急いで手術室へ!」とか言って運び去りますが、実態は止血程度で廊下に放置。
治療したくてもできない惨状。
成す術もなく娘は死亡。自由の身となった州知事は大統領選立候補を表明。
なん…だと。
公邸前は市民がデモ。治安部隊と一触即発(何故か治安部隊が群衆のシュプレヒコールに合わせて足踏みしながら盾を警棒で叩いているのが、威嚇と言うより音頭をとっているように見えて不思議でした)。
群衆の波から一歩前に出たミゲルを治安部隊がボコったのを合図に武力衝突。
火炎瓶VS催涙弾水平撃ち。立ち込める煙にむせるミゲルの前にガスマスクが(ゲーム版バイオ2のラスボス戦で何者かがロケラン投げ入れてくれたのと同じくらい不自然なタイミング)。
装着すると内部が点灯、レッドレンズが紅い眼鏡に…。
何だよおい、かっちょいいじゃねえか。
武器はありませんが国家特殊武装班を舐めてはいけません。余裕で警備突破して公邸内へ。
あっさりと護衛も眠らせると、知事の胸倉掴んで馬乗り顔面パンチ。
銃など不要。肉塊になるまでひたすら殴る。必殺処刑人の誕生です。
実のところ、ミゲルの娘を殺ったのが州知事という確証はないのですが、もし、医療現場が通常に機能していれば娘は死なずに済んだかもしれない、その憤怒がミゲルを突き動かした…んでしょう、多分。
ならば殲滅すべき相手は知事ひとりではありません。腐敗政治全てです。
身体能力は勿論、武器銃器の扱いに長けた専門職。ある時はゴッドファーザーばりの接近暗殺、ある時はゴルゴ13ばりの遠隔狙撃。命乞いの暇も与えず屠る屠る。
バランス感覚として「法律を守れ」「そんな事をしても世の中変わらない」「あの子は帰ってこないしし喜ばない」な“正しい”意見を言う人間が出てきますが、うっせ馬鹿知った事か皆殺し一択だと突き進む主人公が清々しい。
それくらいブラジルの国民は怒っている、という事なのでしょうか。
その集大成的なオチも含め、やり切った感満開な一本でした。
現在、ブラジルのコロナ現場はどうなっているのだろう…。
おまけ
何故か悪い奴らは和食贔屓。
知事は取り調べ中に「握り寿司」の差し入れ持ってこさせますし、大統領選を操る党のボスは最高級の肉として「神戸ビーフ」を振る舞っておりました。
★ベネズエラの医療現場ルポはこちら。
★一瞬、同じシリーズかと思ってしまいますが違います。
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★本日9月15日はオリバー・ストーン監督の誕生日(おめでとうございます!)。
そして全く同じ1946年9月15日に生まれたのがトミー・リー・ジョーンズ(併せておめでとうございます!)。
となるとご紹介する作品はこれしかありません。
★監督絡みでついでにこちらも