デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

トルコ版フルメタル・ジャケット。 ラスト・ブレス

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『訃報はニュースで報じられるが、長さは2分もない。45秒だ。お前たちは45秒だけ英雄になれる。僅か45秒だ!』

見張りが眠れば全員が死ぬ。その訓示。

『死んだら眠る事もできない。食事もできない。家族の元に戻って寛ぐこともできないんだ』

だから…

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ここはイラクと国境を接する山岳地帯にあるトルコ軍カラバル駐屯地。

雲海を眼下に臨む日々是御来光な高所。そこは天国に一番近い基地。

「ラスト・ブレス」
(2009年/レヴェント・セメルチ監督)

 

原題は「NEFES: VATAN SAGOLSUN」、英題が「BREATH:LONG LIVE THE HOMELAND」。「呼吸:我が祖国よ永遠なれ」な感じでしょうか。

※BREATHには「生命」「休息」「瞬間」などの意味も。


独立を目指すクルド人武装組織「クルド労働者党」の散発的な戦闘に晒されているカラバル駐屯地。

トルコは良心的兵役拒否すら認めない完全な男性皆兵制。身体の障害などの理由がない限り、男性には15ヶ月間の兵役(大卒者は12ヶ月)が課されます。

カラバル駐屯地にいるのもそんな短期兵役(所謂ショート・タイマー←「フルメタル・ジャケット」原作タイトル)の若者たち。

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兵役と言えばヘアカット(右はフルメタル・ジャケット)。


ここに歴戦の兵(職業軍人ライファー)のホロゾグルが新隊長として赴任。

ホロゾグルは「ドクター」と呼ばれるクルド人ゲリラに仲間を眼前で殺されており、復讐心が生きる糧となっておりました。

戦争アクションを謳っていますが、クライマックス以外戦闘シーンはほとんど無し。

まったりとした日常といつ襲撃されるか分からない緊張感。

無線に割り込んではホロゾグルに撤退を促すドクターと煽り返すホロゾグル。

そして遂に運命の日が。

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その気になればあんな山頂の掘立小屋吹っ飛ばすのは簡単だとは思いますが、それにしても一気呵成な火薬量。成す術もなく肉塊となっていくトルコ兵。

『お前の城はもうじき落ちる』 『まだ屋根があるぞ』

 

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屋根にはトルコ兵を鼓舞するスローガン「強く勇ましい兵士よ、いざ戦え」が。

129分はちいっと長い気もいたしますが、詩的な静寂を湛えた佳作であったと思います。

 

 

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★本日11月11日は、Mr.燻し銀、ロバート・ライアン(1909年~1973年)の誕生日。

作品そのものには恵まれているものの、燻し銀故に共演者(バート・ランカスターとかウィリアム・ホールデンとか)に喰われて目立ちそびれている事が多いような。

今日は美味しいところを持って行ったこの2作を。 

 

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