国内版のジャケにつけられた宣伝文句は「このジジイ、かなりヤバい」。
酷いコピーです。
簡単な装置と小細工で心霊現象を演出し、何も知らない一般人に霊の存在を信じさせる。
学術実験のような口ぶりですが、実態はバイト先の飲食店で非常識な動画撮って喜んでいる迷惑Youtuberと何ら変わりありません。
欲しいのは動画再生数だけです。
ターゲットに選ばれたのは向かいに住んでいる偏屈爺。
しかし、この爺さん実は…と書くと完全に「ドント・ブリーズ」の系譜。販売元も何とかその線で売ろうとしたようですが、まるで違うジャンルの作品です。
「グッド・ネイバー」
(2016年/カスラ・ファラハニ監督)
仕掛け人の学生コンビはローガン・ミラー(ゾンビーワールドへようこそ)とキーア・ギルクリスト(イット・フォローズ)。
そして向かいの偏屈爺さんがジェームズ・カーン!
2人は爺さん外出中にハイテクローテク織り交ぜた小ネタを仕込んで様々な霊現象を演出(同時に盗撮)しますが、爺さん慌てず動じず驚かず。
何者なんだよ、この爺さん…というのが前半の流れ。
酷いのは国内版のジャケだけでオリジナルはまともなんじゃないか、と思ったらオリジナルも駄目駄目。
もうどっちが監視しているのか分からないデザインのものまで(笑)。
開始早々に彼らの盗撮映像が証拠品として提出される裁判の様子が映されます。
登場人物の誰かが被害者となり、誰かが加害者となって刑事裁判に発展している訳ですが、一体何があったのか。巧い構成です。
オカルトでもホラーでもサスペンスですらない「ドラマ」。是非、妙な期待をせずに観てほしいと思います。
事の詳細には触れられないので、学生二人の部屋に飾られたポスターについて。
すぐ目につくのは「プラン9・フロム・アウター・スペース」と「Attack of the 50 Foot Woman(妖怪巨大女)」、そしてナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」。
小ぶりなポスターで「キング・コング」と「ホワイト・ゾンビ」。
マイナーな所では「Debbie Does Dallas(デビー・ダス・ダラス)」(1978年のポルノ映画。滅っ茶売れたらしい)、「Reefer Madness(リーファー・マッドネス 麻薬中毒者の狂気)」(1936年)あたりが確認できます。
他にもあるので探してみるのも一興かと。
本作を見て思い出した小説があります。
平井和正の短編SF「悪戯」。
退屈が蔓延する学園に赴任して来た元スペースマンの新任教師。彼に対する興味からリサーチを重ね、先生の理想の女性をホログラフで作成した生徒グループ。
先生が彼女にマジ惚れしたところで種明かしをして盛り上がろうという計画。
他愛のない悪戯。
しかし、その女性の姿を見た先生は…。
それは決してやってはいけなかった悪戯。
もし読む機会があれば本作とセットでどうぞ。
裁判に出て来る検事っぽいおばさん、おっかねえ顔だなぁと思ったらタムリン・トミタでした。こんな筋っぽい顔になってしまったのか…。
もう一人、重要な役どころでローラ・イネス(「ER」のウィーバー先生だ!)が出ていました。
★ローガン・ミラーと言えば
★キーア・ギルクリストと言えば
★そして(ゴッドファーザー以外で)ジェームズ・カーンと言えば
★念為、こちらも。
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追悼:福本清三
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「5万回斬られた男」福本清三氏がお亡くなりになりました。
1月1日。京都の自宅で。肺癌。77歳。
本日は若き日と晩年の姿を焼き付けた2作品を。
ご冥福をお祈りいたします。
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★本日のTV放送【13:00~テレビ東京/午後のロードショー】