以前ご紹介した「怪奇蒐集者≪コレクター≫夜馬裕」に連なる怪異語り。
今回の語り部は、沖縄に語り継がれる階段や妖怪、民話、伝承などの蒐集をフィールドワークとしている小原猛。
「琉球怪談」「琉球奇譚」「沖縄の怖い話」などの著作あり。
本土とは空気感の異なる怪異の数々を聴かせて頂きましょう。
「怪奇蒐集者≪コレクター≫ 小原 猛」
(2020年/横山一洋監督)
沖縄の怪異譚を際立たせているのがユタ(霊媒師)の存在。
琉球王朝時代にはノロ(祝女)と呼ばれる女性の祭司(巫女ではない)がおり、地域の祭祀を取り仕切っていたそうですが、彼女らは王朝に任命された国家公務員。
王朝の衰退と共に弱体化して1600年代に廃職となったそうです。
対してユタは民間霊媒師。いわゆるシャーマンで、神を見、声を聞き、霊的問題に対するアドバイスを与えたり、問題そのものを解決したりするようで、イメージ的にはアフリカに於ける呪術師が近しいような気がします。
神と語る事ができる…選ばれし存在とも思えますが、本人たちに言わせると、これは一種の「呪い」なんだとか。
神がここに行けという指示をだしたら、それがたとえ何時であっても、何処であっても行かねばならない問答無用の宮仕え。
できればそんな声は聞きたくありません。
その力は女系の隔世遺伝(婆ちゃんがユタだったら娘は普通の人で孫がユタ)として現れるのが一般的だそうですが、中には関係ないのに神に魅入られてヘッドハンティングされてしまう例もあるんだとか。
勿論、神というのはキリスト教に代表される一神教の神ではなく、八百万の神。神様同士が喧嘩する事もあるようで、問題の答えは必ずしもひとつではなかったり、神様が先に呪いをかけて後から解くというマッチポンプ方式で信者を確保したりもするそうでなかなかにブラックなビジネスです。
そんな風土に根差した怪異が全7話。
「赤い蟻」「ユタを操るもの」「中城高原ホテル」「宮古島の隣人」「サトウキビ畑の日本人」「はぶりか」「牛」
すでに取り壊されている廃墟(中城高原ホテル)の内部映像👆が見られるのは貴重。
語り口は朴訥。夜馬裕のような二段落ち・三段落ちという凝った構成ではないので、ネタとしての練度は今ひとつ。
ただ、実体験に基づく話が多いので親近感は湧きます。
基本「盛らない」ようにしているようで、話がフェードアウト気味に終わってしまうのは人によって好みの別れる所かと思いますが、「いやだって聞いた話はここまでだし」「私が見たのはここまでだから」という引き際はある意味清々しいとも…。
沖縄特有の文化に紐づけた解説は、沖縄の「知らない」一面を垣間見させてくれて興味深かったです。
★どうせあたしの沖縄の認識なんかこの程度ですよ。
★こちらもどうぞ。
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★本日7月18日は、ヴィン・ディーゼル(1967~)の誕生日(おめでとうございます!)
ディーゼルと言えば、黙って「ワイルド・スピード」観ろよ、なのでしょうが、生憎何故か縁が無く…。
今回は残念無双な結果に終わってしまったこの2本立てで。