『アニキ、こいつは駄目だ。すぐ戻ってくれ』
『なに?』
『奴は箱入り娘だ。
侵入者を皆殺しにするように作られてんだよ!』
時に昭和の中頃。場所は日本のとある森の中。
森の所有者はヤクザ…と言っても博徒ではなく神農(劇中呼称は香具師)。
つまり的屋の親玉。このフーテンの寅の元締めのような存在が、何故か呪術師とオーバーラップ。
《香具師とは…薬草の神、神農皇帝を崇め、日本各地を旅しながら様々な呪術を身に着けて行った男達である》(オープニング・ナレーションより)
いきなり大嘘ぶちかましてきましたが、そういう世界観と割り切りましょう。
ヤクザの種類は博徒と香具師。そして香具師は呪術師。OK?
「昭和極道怪異聞ジンガイラ/仁我狗螺」
(2014年/近藤啓二監督)
組長が現在行方不明の梓黒(しぐろ)組が所有する広大な森林。その中には強力な結界で守られた一角が。
兄弟分である江洲梅本一家組長・梅本はこの森の中に行方不明の組長・梓黒がいると確信して、サジキ・ジントウと香具師の中でも特に呪術に長けた伎師(わざし)・クゼ・サブロウタを派遣。
梓黒組若者頭ら立ち合いの元、梓黒組の組員二人を連れて森に入るサジキ(クゼは結界の外に待機。通信手段はトランシーバー)。
待っていたのは、侵入者の排除をプログラムされた生き人形。人呼んで「箱入り娘」。
にしても画が汚い(笑)。完全に8mm自主映画の趣き。
点在している祠に収められたスライドパズルを動かすと、空間がねじれて別の場所に飛ばされる、という移動ルールは斬新。
ターミネーターのような「箱入り娘」に対抗するため、梓黒組の倉庫に眠っているもう1体の生き人形「傀儡娘」が運び込まれ…。
ホワイトロリータな箱入り娘対ゴシックロリータな傀儡娘。
傀儡娘は繋がれた鎖をコントローラーのように操って(水平に繋がれたマリオネットのように)クゼが操縦。
何と言うか、姦姦蛇螺の姉妹喧嘩って感じ(違うか)。
森の木陰でひたすら自主映画アクションと言えば北村龍平監督の「VERSUS」ですが、時間に取り残された二人が何を守るのかも分からないまま殺し合うという意味では「ミカドロイド」の方が近い手触りかも。
どれも作品として成功しているとは言い難いですが、好き嫌いで言えば本作が一番「好み」ではあります。
★ご参考
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★本日7月30日はローレンス・フィッシュバーン(1961~)の誕生日(おめでとうございます!)
この人、細かく刻んで稼ぐ体質なのか、「マトリックス」以降はビッグバジェットに出る傍ら、低予算ものにも顔出しして箔付けに寄与しています(やがてトレホになる予感)。
製作総指揮も買って出た低予算小品。
作品の地味さを顔力で救った
「マトリックス」以前の超大作(?)