例えば、海水浴場。途切れることなく海に入っていく家族連れ。
「立ち止まらないでください」と繰り返し叫び続ける監視塔。
最早引き返す事もできなくなった所で、自分が踏みしめているのが海底の砂ではないことに気づく。
それは折り重なった溺死体…(筒井康隆「幸福の限界」)。
突然やって来る日常と非日常の分水嶺。
ホラー映画や怪談の醍醐味はこの「え、ちょっと待って」な場面転換にあります。
ページをめくった瞬間の語り口の妙。
「怪奇蒐集者《コレクター》村上ロック」
(2017年/横山一洋監督)
前回が沖縄の怖い話だったので、今回は北海道は帯広市出身の怪談師・村上ロックで。
怪異の入り口は親や幼馴染など身近な思い出話から。
収録作は「お笑い番組」「光る目」「跡地」「怪奇列車」「団地の記憶」の5作。
その時代を生きた者なら知らぬ者無しな化け物番組「8時だよ!全員集合」にまつわる怪異の思い出「お笑い番組」。
「下山事件」の前年、戦後日本を震撼させた大量殺人事件に絡む怪異「跡地」。
個人的なネタでも背景に有名な事件や番組があるとつい耳を欹ててしまいます。
歌舞伎町(←作品内テロップでは六本木になっていますが、その後移転)の怪談ライブバーで研鑽しているだけあって、語り口は流暢(滑舌も良い)。
きちんと聞かせるための話し方をしています。
ご本人のぬめっとした顔立ち(失礼!)も怖さの醸成に一役買っているような(返す返す失礼な言い草ですが、そこは本人も分かっているようで、この顔立ちを最大限有効活用しています)。
怪談師は顔も命
個々のお話に触れるとネタバレになって興ざめなので、タイトルにちなんだホラー作品を並べてお茶を濁しておきます。
★「光る目」と言えば…(そのまんまですが)
★「怪奇列車」ものは沢山ありますが、今回はちょっとタガの外れたこちらで。
★「団地の記憶」でドンピシャなのは、
★過去にご紹介した怪奇蒐集者はこちら。
-----------------------------------------------------------------------
★本日のTV放送【19:00~BS12/日曜アニメ劇場】
※放送は「劇場版Ⅰ The King of Eden」