エイドリアン・ライン監督によるオリジナルは、現実と幻覚を巧みにシャッフルして観客の鼻づらを引きずり回す(しかしそれが心地良い)一種の走馬灯映画でした。
構成・映像・語り口…ちょっと泣けるラストまで実に「いい感じ」。
あれをリメイクするのは並みの監督では無理なのではあるまいか、と思っておりましたが…。
…やっぱり無理でした。
「ジェイコブズ・ラダー」
(2019年/デヴィッド・M・ローゼンタール監督)
ジェイコブ・シンガーは外科医。アフガニスタンに従軍していた時、兄アイザックが瀕死の状態で運び込まれてきましたが救えず。
当時の様子を夢に見てうなされる事もありますが、妻と生まれたばかりの息子に支えられて何とかやりすごしておりました。
ある日、アイザックと同じ部隊にいたという男から「アイザックは生きている」と告げられたジェイコブは怪奇な幻想を見るようになり…。
オチはオリジナルを観ていなくとも誰でもすぐに分かります。
何か意外性のあるひと捻りがあるかと思いましたが…ない。
オリジナルの背景には(実話と喧伝されている)米国陸軍開発による化学兵器BZガスの開発過程における自国軍兵士に対する生体実験というスキャンダルがあったわけですが、この部分が笑っちゃうくらいスケールダウン。
もう「ショッカー」が「電柱組」になる(いやもっとか)レベルのショボさ。
一応はリメイクと言う事でお約束のカット(顔ブルブルとストレッチャーのキャスターアップ☜但し、車輪が床に着いちゃっている)は入っておりましたが…。
何か無性にオリジナルを観直したいと言う渇望に襲われるリメイクでした。
ポスターも全くやる気を感じさせません(右はエイドリアン・ライン監督版)。
★「電柱組」ってなんじゃ!?という方はこちら参照。
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★本日9月22日は樋口真嗣監督(1960~)の誕生日(おめでとうございます!)
さて何をご紹介しましょうかと過去記事見返して唖然。
わたくし樋口真嗣監督作を褒めたことが一度もありません(特撮監督とした参加した諸作と庵野の100%監視下に置かれていたであろう「シン・ゴジラ」を除く)。
褒めてないどころかケチョンケチョンです。
これは流石にマズイかしらと思って全記事読み返しましたが、直すところが見つかりません(笑)。
むしろよくこの程度で収めたな俺って大人じゃんな感慨しきり。
折角の記念日。回を追うにしたがって雪崩式に酷くなるフィルモグラフィーを眺めてみるのも一興です。