『ま、振り返って見りゃ、随分と長くつきあってきたが、後悔した事は一度もねえよ』
『それってルパンの事? マグナムの事?』
『…さあな』
ルパンを観たのは何年、いや何十年ぶりでしょう。
時計の針がFIRSTで止まっている(正しくは少し進んではFIRSTに巻き戻されて止まっている)ので、浦島太郎どころの騒ぎじゃありません。
浪川五ェ門も沢城不二子も山寺銭形も(実を言うと栗貫ルパンですら)今回初めて目に(耳に)。
その中で唯一オリジナルの牙城を誇っていた小林次元が今回を以て勇退。
ラストダンスを見届けましょう。
「ルパン三世 PART6/EPISODE 0 -時代-」
(2021年10月9日深夜日本テレビ放送/富沢信雄演出)
久しぶりに聞く小林次元の声は予想を遥かに超えて嗄(しわが)れていました。
アフレコ現場で頑張っている小林さんの顔が浮かんでしまうほど。
嗚呼、こんなに年輪を重ねてしまったのか。
『つまらねぇ時代はこっちから笑い飛ばしてやるよ』
泥棒家業からの引退を匂わせつつ(次元本人が引退してしまったら翌週からのエピに繋がらなくなるので)留まる(次の声優にバトンリレーする)という形をとりながら小林次元最後の見せ場を作る。
楽屋落ちと言うなかれ。50年の奉仕を慰労して何が悪い。
『次元大介、お前こそ何故ずっとルパンの相棒を…』
『別に語るほどの理由なんてねえよ。ただ面白い事をやって美味い酒と美味い煙草を吸えりゃそれで良かった』
銭形(山寺銭形はこういう声なのか。加持やトグサのライトな感じからオクターブ低めのキャラ作り)とのバーでのやりとり。こういう敵味方が一時休戦的に交わす会話っていいですよね。
『俺には向かねえってだけだ。お前がいい女だってのはわかる』
『あなたにそう言って貰えるなんて…天地がひっくり返ったみたい』
あたしと組まない?という不二子の誘いを「天地がひっくり返ってもあり得ねえ」と笑い飛ばした次元が初めて不二子に捧げた誉め言葉。
ルパンが用意したとっておきの酒に貼られたラベルの年号は「1971」。
言わずと知れたFIRSTルパンの放送年。
『その酒、ひとりで飲んだら承知しねえぞ』
殿として銭形率いる追手を一蹴した次元。中の人の花道にしては地味かもしれませんが、ここで派手な見せ場を作り過ぎると次週からの遺産相続人のハードルが上がってしまうので丁度良い頃合いであったかと思います。
火中の栗を拾ったのは初代五ェ門の息子、大塚明夫。思いつく限り最善のチョイスではないかと。
大塚さん、頑張ってください。
そして小林清志さん、お疲れ様でございました。
★ご参考❶
次元大介=クラシックな男という公式を確立したのがこちら。
★ご参考❷
そして小林清志さん以外の人が次元をアテた唯一の例外がこちら。
007に於けるジョージ・レーゼンビーみたいな位置づけですが、これはこれで素敵です(次元役は銀河万丈)。
機会がありましたらどうぞ。
★本日10月14日はウド・キア(1944~)の誕生日(おめでとうございます!)
何気にカルト映画にちょこちょこ顔出して美味しい所を持って行く(顔が存在を激しく主張するのでチョイ役でも印象に残る)得な性分の役者さんです。
本日は若き日の代表作ふたつと比較的最近の印象作ひとつを。