北極圏に不時着した男。
乗っていたセスナをシェルターに、根気強く救難信号を送り続け、雪原に巨大なSOSを刻み、簡易な装置で魚を釣り(南極なら不可能ですが、北極圏は穴を掘ればスケールのデカいワカサギ釣りが出来る)、じっと救助を待つ。
時間と行動を事細かにルール化した規則正しい毎日。しかし、日々是徒労。
助けは来るのか…。
「残された者 -北の極地-」
(2018年/ジョー・ペナ監督)
黙々と作業をこなす主人公オボァガード(マッツ・ミケルセン)の日常が淡々と綴られます。
一切の説明無しで。
どこから来たのか、どこに行こうとしていたのか、何故、不時着する破目になったのか。
回想もモノローグも一切。
シェルターの近くの比較的雪の影響の少ない場所に積み上げられた石。
恐らくは墓石。飛行機には同乗者がいたようです。
それが誰なのか、妻なのか子供なのか友なのか客なのか。不時着時に死んだのか、不時着後に死んだのかも一切。
ハードボイルドじゃありませんか。
ある日、今日も時間切れと諦めかけた救難信号に反応が!
見上げればヘリ。助かる! しかし…。
突風に煽られて制御を失い墜落するヘリ。
生存者は腹部に裂傷を負った女性1名。
爆発を免れたヘリの中は宝の山。ピッケル、非常食、ガスコンロ、ライター、ソリ、そして地図。
観測所の位置が確認できましたが歩くには遠すぎる。しかし、この女性は放っておけば恐らく死ぬ。
『必ず助かる』
♪その場しのぎの慰め言って、北極二人旅。
周囲を徘徊するホッキョクグマ。タロとジロに匹敵する極地サバイバル。しかも…
『地図と違う!』
やりたい事は凄く良く分かるのですが、意図的な穴やあざとさも見え隠れして集中度はいまひとつ。
単に描写していないだけだと思いますが、普通最初にやるだろ、ヘリの無線チェック。
折角、途中から登場人物が増えたのに、怪我と国籍(身分証明書の文字から察するにタイ人)を理由にコミュニケーション全放棄。
主人公が命懸けの旅に出ることを決意させる動機づけの記号にしかなっていません。
説明くさい会話とかさせたくなかったんだと思いますが、これでは女性である必要も、極論、人間である必要もありません。
極地だとアップダウン以外は景色に変化もないので、情景的にもやや単調。「ちょっと飛ばすか、もちっと待つか」の葛藤が続きました。
因みに本作、企画時点のタイトルは「On Mars.」だったそうで、火星を舞台にしたサバイバルになるはずでした。
が、企画途中でマット・デイモンの「オデッセイ(THE MARTIAN)」公開の情報が入って来たので、急遽、北極舞台に切り替えたそうです。
罪だぜ、マット。
ここで「遭難系サバイバル映画選手権」と言うのも芸がないような気がするので、ちょっとだけ捻って「異常で孤独だが規則正しい生活選手権」を開催してみます。
ざっと思いついたのは以下5作。
- 地球最後の男
- サイレント・ランニング
- EXO≪エクソ:地球外侵略者≫
- 月に囚われた男
- 彼とわたしの漂流日記
敢えて1本選ぶとすればやはり「地球最後の男」でしょうか。
★ご参考