バーの留守番を頼まれた黒人『ようし、今から黒人は半額、白人は倍額だ』
常連の白人客『ちょっと外で日焼けしてくるわ』
人種の距離感ってこれくらいが丁度良いんじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
ここはオーストラリア。クイーンズランド州ギンピー(←ロケ地)。広がりたいだけ広がる平原に住んでいるのはまったりとした、それでいて下品で猥雑な人々。そして人喰い猪。
「ボア」(2017年/クリス・サン監督)
タイトルからパイソンとかアナコンダのお友達を想像してしまいましたがスペルが違いました。
BOAではなくBOAR。イノシシです。
バン程度なら一撃でどつき転がす巨大イノシシ。
オーストラリアで猪と言えば「レイザーバック」ですが、あれよりは遥かに1本筋の通った人でなし映画に仕上がっています。
CGに背を向けた、しかしアニマトロニクスほど精巧ではない(ただしホワイトバッファローよりは良く出来ている)ハリボテがひとりだんじり殺戮祭り。
得意技は体当たりと牙串刺しと頭蓋割り。
巨体の割りに神出鬼没。気がつけば前に後ろに左に右に。
このお姉さん👇なんか後ろから牙で一突き。梅安先生や灸屋(やいとや)又右衛門に針1本刺されただけで死んでしまう「盆の窪」から口蓋突き抜ける「口だけ食人族」状態。
更にそのままぶんぶん振り回されて体で感じる遠心力。
どう考えても即死ですが、何故かすぐには死にません(不死身かよ!?)。
彼女を発見したジョン・ジャラット(「ミック・テイラー 史上最強の追跡者」では旅行者殺しまくるサイコさんでしたが、今回は普通の人)の対応が酷い。
『何も言うな。話さないで。…君の名は?』
おい!(笑)
オーストラリア映画だけあって、年配者の中には「マッドマックス」出演者がちらほら。
ロジャー・ウォード(裸マフラーで鳥に餌やっていたフィフィ・マカフィー)とかスティーヴ・ビズレー(全身黒こげジム・グース)とか。
特別ゲストでビル・モーズリーが。
名前見た時、てっきり彼がクズ親父で、さんざっぱら家族に酷い事した挙句、イノシシ倒して家族の信頼取り戻すのかと思いましたがかすりもしませんでした。
出番も見せ場もないまま頭齧られて終わり。折角、アメリカからビッグネーム呼んだのに何という扱い。
では誰が主役なのかと言うと、牧場主の大男、ネイサン・ジョーンズ。
「マッドマックス/怒りのデスロード」にも出ていた“偏差値貧乏なロック様”な感じの元プロレスラー(総合格闘家としてのデビュー戦は1997年のPRIDE旗揚げ戦。相手は何と北尾光司←この時のリングネームは北尾光覇)。
最後はナイフ1本(ほぼ素手)でイノシシに挑むという、撮り続ける金も気力もなくなったとしか思えないグダグダ展開になりますが、それもまた味わいです。
ナイフを構えるネイサン・ジョーズをあしらった本作のポスター。もう全く別のジャンルになっています。サイコキラーかよネイサン。
おまけ
テントで彼女とムフフな事をしようとして果たす前にイノシシの餌になってしまったお兄ちゃんが紋々背負い。白人が和彫りとは珍しい、と思ったら二の腕に漢字一列。
「義勇仁礼誠」更に横書きで「名誉」。
新渡戸稲造の「武士道(Bushido: The Soul of Japan)」であれば、この後に「忠義」が入るはずですが、アングルが微妙で確認できず(頭に義を持ってきているので多分ない)。
このお兄ちゃんブシドーマンだったのか(喰われちゃったけど)。
★オーストラリアでイノシシと言えば…
★ついでにK国でイノシシと言えば…
★カンガルーも忘れるな。