デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【昭和42年の東京景観】無頼より 大幹部【東映にはない日活ロマンやくざ】

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『先輩後輩は昔の事だ。お互いもうガキじゃねえ。どかねぇといくぞ』

『どかねぇよ』

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この『どかねぇよ』一言で世界が渡哲也一色に。

「無頼より 大幹部」(1968年/舛田利雄監督)

※本編タイトルは旧字体で「無賴」。

暴力団幹部から作家に転向した藤田五郎の自伝的小説「無頼 ある暴力団幹部のドキュメント」の映画化。無頼シリーズ第1作。

渡世の義理で特少の先輩を手に掛けた(殺してはいない)藤川五郎(渡哲也)。

3年の刑期を終えて娑婆に出てみれば、下駄を預けた昔気質の水原一家は衰退著しく、代わりに肩で風切って歩いているのは新興やくざの上野組。

劇中設定は《昭和30年頃》となっていますが、公開が1968年1月なので撮影は昭和42年。ここに切り取られているのは昭和42年の東京です。

時代を色濃く映しているのは何と言っても鉄道。

渡と松原智恵子の至近を通り過ぎる都電。

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その線路上を歩く渡。

渡の帰りを「待っている」と言った女がサラリーマンと結婚して暮らしているのは、東武東上線上福岡駅近くの団地でした。

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手打ちの裏で暗殺される浜田光夫が立っているホーム。「どこの田舎の駅だよ」と思ったら新宿駅

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上野駅からは蒸気機関車(C57)が。

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今や絶対に撮れない別れのシーン。

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お話は出る人出る人ばっさばっさと死亡フラグをはためかせ…。

犬死を 積んで重ねて 殴り込み

土砂降りと泥濘と殺戮と。

良きにつけ悪しきにつけ、日活やくざ映画には(東映にはない)ロマンがあります。

それは、待っている女と待てなかった女、果たせなかった約束と義理と人情と兄弟愛が溢れているからでしょう。

本作と同年、東映深作欣二鶴田浩二の組み合わせで、着流しやくざの葬送とも言える「博徒解散式」を撮っています。

 

★ご参考

 

 

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★本日3月12日はジョン・カザール(1935~1978)の命日。

遺作に刻まれた在りし日の姿を偲んで…。

 

★本日のTV放送【19:00~BS12/土曜洋画劇場】