家を買った。別れた女房には6週間借りただけと言い訳した。
息子のフィンにはお色直しして転売するのさと嘯(うそぶ)いた。
どっちも嘘だ。
俺にはこの家が必要なんだ。
失ったものを取り戻すために。
俺の買った家には、かつて魔女と呼ばれた女が棲んでいた。
「事件物件 呪縛の連鎖」(2018年/アンディ・ミットン監督)
酷い邦題をつけられたものです。
もう「事故物件」ブームに乗っかる気満々。
タイトルから連想されるお話は、
かつて凄惨な事件があった家に移り住んだら、超常現象がバカスカ起きて、神父も霊能者も役立たずですが最後は愛が勝つ(もしくは全滅エンド)。
という「悪魔の棲む家」系だったりしますが、予想を覆してまったく違う方向に。
派手派手しいシーンは無し。ゴアもグロもエロも無し。突然どしゃーんと音が響いて「びっくらこいた~」も無し。
所謂オカルト・ホラーを期待すると景気の良い肩透かしを喰らう事になりますが、観終わった時には「あ、何か爽やか」な気分になる不思議映画です。
ただ、シーンのそこかしこに70年代オカルト・ホラーの引用は見られます。
窓辺の椅子に座る魔女のイメージは「家」(1976)に酷似していますし、
左:家 右:事件物件
窓辺に佇む人影は「センチネル」(1977)を彷彿とさせます。
左:センチネル 右:事件物件
逃れたと思ったら逃れていなかったと言う囚われの構図は「魔鬼雨」(1975)でしょう。
左:魔鬼雨 右:事件物件
こういう基本の韻を踏んでいる辺りが静寂ながらも飽きの来ない流れを生んでいるのかもしれません。
また、本作にはこういう👇「本来いないはずの人物が何気に移り込んでいる」カットがいくつかあります。
ロングで撮っているので気付いた人だけぞっとする隠し要素。ちょっとビデオ版「呪怨」の伽椰子登場シーン(無人のはずの家のベランダに伽椰子が顔を出す)を思い出しました。
左:呪怨 右:事件物件
アンディ・ミットン監督は脚本、音楽、編集までこなす「カーペンター・タイプ」。
フィルモグラフィを見ると、「オズの魔法使い」にオマージュを捧げたスリラー「リクイッド・ウッズ 樹海」とか、死後の世界が実在することを証明した最初の人間に3万ドルを渡すという新聞広告を出した男の数奇な運命を描いた「WE GO ON -死霊の証明-」など、タイトルは最低だけど何か面白そうな作品が並んでいました。
ちょっと気になる監督さんです。
★引用元(と勝手に認定している)作品はこちら。
★タイトルは似ていますが…
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★本日のTV放送❷【20:00~BS12/蘇るゴールデン・サメ劇場】