『この特捜部の任務は犯人を殺す事じゃないんだ。記録を見れば分かるが、お前たちが事件に立ち会うと、容疑者の逮捕はゼロで死人ばっかりゴロゴロ出るのはどういう事だ!?』
『でも死んだ奴らは一人残らず犯罪者ですよ』
『屁理屈を言うな!』
イタリア版元祖あぶない刑事。逮捕じゃないよ退治だよ。
「バニシング」(1976年/ルッジェロ・デオダート監督)
警察内部でも存在秘匿の覆面組織「特捜部」。そこの色男コンビ、トニー(レイモンド・ラヴロック)とフレッド(マルク・ポレル)が主人公。
冒頭、まったり爽やかな曲に乗ってローマ市内をノーヘル二人乗りで流す二人。何が素晴らしいって、この絵柄、正面から撮れば常に色男二人の顔がひとつの画面に収まっている訳ですよ。
しかも、後ろのトニーが前のフレッドと被らないよう、絶えず体を左右に動かしてツーショットキープ。目線はカメラを見たり外したり。見事なサービスカットです。
《よ~し、いい男はたっぷり堪能したな。んじゃ話始めるぞ》ってな感じで最初の事件スタート。
銀行から出て来たお姉さまのバッグを二人乗りバイカーがひったくり。しかし、このお姉さまバッグ握って離さず、そのまま引きずられて石柱(?)のようなものに脳天くい打ち(流石「食人族」の監督。描写が無駄にエグい)。
それでもバッグ離さず。バイク停めて降りて来た犯人がストンピング喰らわしても離さず(そんなに大事なものが入っていたのか)。ついには諦めて逃走。
勿論、そんな悪党をふたりが許すはずもなく、大チェイスの末、犯人退治(一人は事故死ですが、もう一人は息も絶え絶えのところ首折ってトドメ)。
『やつら二人は止まっているトラックに突っ込んで死にました。ひとりはブレーキが腹に刺さり、ひとりは首の骨を折って即死同然でした』
報告済ませて一件落着。ってな感じで、犯人は原則逮捕せず退治。投降の意思表示をしても面倒くさいから射殺。女とみれば家政婦の姪だろうが容疑者の妹だろうがとりあえず口説いてベッドイン。今撮ったらどこが噛みついてくるか分からない70年代イタリアンの底力。
ラスボスは麻薬&賭博組織のドン、パスキーニ(レナート・サルヴァトーリ)。
はみ出し刑事ふたりが麻薬組織追って、悪党の車焼いちゃう所とかピーター・ハイアムズ監督の「破壊!」(1974)と被りますが、向こうは「主人公二人の見た目が冴えない」上に「エンディングが爽快感ゼロ」なので印象は真逆です。
最後に心温まるトリビアをひとつ。
本作、続編の企画があったようなのですが、ラヴロックとポレルの仲が悪く中止になったそうです(いい話だ…)。
ついでに、本作VHS化時のタイトルは「ダーティ・デカまかりとおる!」でした。
★レイモンド・ラヴロックと言えば…
★マルク・ポレル出演作と言えば…
★そして、デオダート監督と言えば勿論…
★本日7月13日はロバート・フォスター(1941~2019)の誕生日。
2019年に脳腫瘍で他界(78歳)されてしまいましたが、このカルトな1本は(色んな意味で)光っています。
★そして本日は「オカルト記念日」でもありました。
※何か今日は祝!!70年代な感じになっちゃいましたね。