これ、もし監督が河崎実だったら、ここまで悪し様にボロクソ言われはしなかったのではあるまいか。
「お金一杯使って馬鹿できて良かったね」と生暖かい目で見守られていたのではあるまいか。
まあ、彼が作ったらこんな中途半端な出来にはせず、メーター振り切った大馬鹿映画にしたでしょうが。
「大怪獣のあとしまつ」(2021年/三木聡監督)
突如現れ破壊の限りを尽くした大怪獣は、やはり突如現れた謎の光に殲滅されてご臨終。
残されたのは処分の方法も所管部署も分からない巨大な生ゴミ…死体。
冒頭の光の輪で「AKIRAかよ!?」と思ったら、途中で実写版ミヤコ様が出てきたので確信犯なのでしょう。
お話のメインは、死体処理を巡って各省庁責任者(大臣)が繰り広げるドタバタ劇。
特に三木組のいつもの人たち(除くオダギリジョー)のうすら寒いギャグの応酬が駄目な人には全く駄目な代物で、批判の矛先も多くはこの部分に向けられていたようで。
元々この手の笑いのセンスって三木監督は持ち合わせていない(という言い方が悪ければ私の求める笑いの範疇に一歩たりとも踏み込んでいない)ので、ある意味「与件」ではあります。
河崎作品で、ザ・ニュースペーパーがやっている「似ていない上に笑えないコント」と一緒で監督の名刺みたいなもの。
河崎作品では目を細められるのに、三木作品では眉を顰められる…まあお人柄って奴でしょうか。
最初から「質の悪いシチュエーション・コメディ」として宣伝していれば、あそこまで炎上することはなかったと思いますが、「シン・ゴジラ」の後日談みたいな売り方をするから。
大人の(と言うかベテランの)役者たちが、滑り倒し見本市を展開していく中で、主役3人の果てしなくどーでもいい三角関係演技だけが超シリアス。何このバランス感覚。
題材は悪くないので、本当に「シン・ゴジラ」の後日談的ポリティカル・フィクションにしてしまうか、「大怪獣東京に現わる」のような怪獣を全く映さない市井のリアクションものにするか、「東京原発」のようなディスカッション・コメディにするか(もしくは開き直って河崎テイストにするか)すれば、結構いい線行ったのではないかと思うのですが…。
三木監督のファンだけが楽しめる(ひとりよがりな)作りが反感買っているような気も…。
ああでも西田敏行は頑張っていたと思います。
ふと、河崎作品を観返したくなってしまいました。
馬鹿特撮(いや違う特撮バカ)の作品を列挙しておきます。正月に真の脱力を体感したい方は是非こちらを。
★新春特別企画/河崎実特撮バカ一代★
★ご参考
☜ランキング投票です。やっぱ三木より河崎だよなぁという方はワンポチを。
★本日のTV放送【22:00~BSテレ東/シネマクラッシュ】
2022.11.03テレビ東京、2021.12.11BS日テレ、09.05BS日テレ、01.27テレビ東京、2020.03.08BS朝日。大人気ヘヴィロテ。