『こっち側から観る景色と、向こう側から観る景色とはまるで違う。見えなかったものまで見えてくる。お前はどっち側で観てるんだ?』
暗殺者とターゲット。異国で出会った捨て石ふたつ。
「追跡者 SHOT GUN」(2012年/室賀厚監督)
ソウルでの覚醒剤取引で逮捕された黒木組組長・黒木(小沢仁志)。
収監2年。保釈申請は却下。次の申請は1年後だが、この2年の間に大黒柱を失った組はガタガタ。1年後には存在すら怪しい状況。
そんな黒木にソウル警察のチャン警部から持ち掛けられた怪しい取引。
今すぐ釈放してやる。その代わりに捜査に協力しろ。ヘサン組の幹部・梶(白竜)についてだ。
『この国の警察はヤクザひとり掴まえられないのか』
『逮捕が目的ではない。抹殺してほしいんだ』
梶はヘサン組を内定していた潜入捜査官を何人も殺しているらしい。
『ヤクザを殺すにはヤクザを雇うに限る』
倫理的にあり得ない申し出ですが、警察には梶に生きていてもらっては困る別の事情がありました。
不承不承、条件を飲んだ黒木ですが、出所早々豪遊。支払いを見張りの刑事に押し付けた挙句、ぶち転がして金と拳銃奪って出奔(♪ヤクザを信じちゃいけないよ)。
とは言えバックレる気はなく、自分のやり方で約束は守る。仁義の男です黒木。
まずは韓国のカジノ利権でブイブイ言わせている兄弟分(哀川翔)を呼び出して状況把握。
哀川翔、後半でも大活躍。滅茶儲け役のゲスト出演です。
ヘサン組の覚醒剤は日本の武田組へ。量が多くて捌ききれない武田組は敵対する北斗会のシマにまで販売網を広げて一触即発状態…らしい。
次に貸しのある昔の仲間を仲介にしてヘサン組に接近。
ヘサン組の事務所には北斗会の幹部・鮫島(中野英雄)が東京からクレームをつけにきておりましたが、梶に相手にされずに追い返されるところでした。
この時は梶との面会は叶いませんでしたが、何と梶は黒木が泊っているホテルを訪問。
梶は黒木がチャン警部の密命を受けた暗殺者だと見抜いておりましたが、何故か殺さずその場を去り…。
日本では頭に血が上った鮫島が日本のヘサン組組員を弾いてしまい…。
カタをつけるため梶は単身日本へ。勿論、後を追って黒木も帰国。
背景に組同士の抗争はあるものの、主題は追う者・追われる者の間に生まれる「互いに捨て石」というシンパシー。
ちょっと「ヒート」におけるアル・パチーノとロバート・デ・ニーロを彷彿とさせる関係性です(すみません、褒め過ぎました)。
室賀監督と言えば銃撃戦。場面数は少ないものの景気よくぶちかましてくれました。
梶の単身殴り込みは「男たちの挽歌」テイスト。
クライマックスで黒木は突然UZIみたいな奴出して弾丸撒き散らしていましたが、弱小組織にUZIはないだろ、普通。
こうして見るとハンドガンと短機関銃でちゃんとマズルフラッシュの形状が違っているんですねえ(いつもながら良い仕事しています、浅生マサヒロさん)。
最近のVシネは手当たり次第にシリーズ化の傾向ですが、こういう「1話完結もの」の方が私は好みです。
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★本日1月24日は格闘家・前田日明(1959~)の誕生日(おめでとうございます!)
名勝負も多いが事件(問題発言含む)も多い。筆頭は「対アンドレ戦」「対長州無法キック」とかですが、今回は第1次UWF時代の対藤原戦と、ヤバさてんこ盛りの副読本、そして、若き日の前田(と赤井英和)をモデルにしたアナーキーな青春映画を。