『ド・ゴールはあの国を手放すつもりよ』
1960年、アルジェリアの独立を巡って、三つ巴・四つ巴の内戦状態にあったフランス。
独立阻止の強硬策をとるものと期待されたド・ゴールですが、あっさりアルジェリア独立容認に宗旨替え。
とは言え、現地での(アラブ人の)蛮行(拷問やら即時処刑やらの非人道的行為)を放置はできないので、ゲリラの拠点はナパームで灰塵にして知らんぷりを決め込むことに。
インドシナ戦線で功績をあげ、フランス国籍を得た(もののベトナム帰還兵同様の壊れ方をして戦線を退いた)ブライトナー大佐に持ち込まれた「断れない」頼み事。
オーレス・ネメンチャ地方で行方不明になった(恐らく拷問の末に仏軍拠点の場所をゲロって殺された)シモン・ドリニエール大佐の形見を持ち帰れ(ナパームが降る前に)。
頼み人は大佐の母。対価はブライトナー大佐がインドシナから連れ帰った女性ソーアのフランス滞在のお目こぼし(要するに脅迫)。
『ソーアは(ベトナム人ではなく、山岳民族の)モン族です。彼女はフランス側で戦い、ディエンビエンフー(ベトナム人民軍とフランス軍合わせて約1万人の戦死者を出し、フランス軍のベトナム撤退の契機となった、第一次インドシナ戦争中最大の戦闘)で家族を失いました。それなのにフランスはモン族を見捨てた』
『フランス人になったばかりのあなたに、この国のやり方を少し教えてあげましょう。占領中は女にいい顔をして、解放時に身ぐるみを剥ぐのよ。その後、男たちは飲んで忘れる』
モン族だけではありません、フランスに蹂躙され、翻弄され続けてきた様々な民族の怒りの集大成(のひとつ)がアルジェリア独立戦争。
因みにド・ゴールの弱腰政策に怒ったOAS(秘密軍事組織。「アルジェリアは永遠にフランス」をモットーとし、アルジェリアの独立を阻止するために武装闘争を行った、フランスの極右民族主義者の武装地下組織)が計画したド・ゴール暗殺計画が「ジャッカルの日」なのですが、それはまた別の話。
「ラスト・コマンドー」(2019年/アブデル・ラウフ・ダフリ監督)
安いにも程がある邦題ですが、原題は「QU'UN SANG IMPUR...」。
フランス国歌『ラ・マルセイエーズ La Marseillaise』の歌詞「Qu'un sang impur abreuve nos sillons !」から来ているようです。意味は、
《敵の不浄なる血で耕地を染めあげよ!》
国歌というのは独立と勝利の歌なんですねえ(これに比べたら「君が代」なんか以下略)。
劇中、「フランス国歌を元気に歌わない」という理由でアラブ人捕虜をまとめて銃殺刑にするシーンがありました。
不承不承マダム・ドリニエールの要求を呑んだブライトナーは開かずの扉で封印した自室から大振りな鞄をひとつズルズルと。
中身はインドシナ戦争の思い出。中央にドーンと鎮座しているのは短機関銃。
シルエットとドラムマガジンが添えられている事から「トンプソンA1」と思われます。
インドシナ戦争でフランス軍が支給した短機関銃はMAT49だったはずですが、アメリカ製トンプソンが出てきた辺り、ブライトナーの出自が垣間見える貴重なカットです。
途中、クセのあるメンバーを拾い集めたブライトナーとソーア(山岳戦闘民族だから下手な兵士より役に立つ)は、アルジェへ。
プロットを「プライベート・ライアン」に重ねる人もいるようですが、いやあ「地獄の黙示録」(35mm版の方)でしょう。
スケールは腰が砕けるくらい小さいですが…。
鑑賞前にアルジェリア戦争について復習しておくことをお勧めします。
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★本日3月2日は三隅研次監督(1921~1975)の誕生日。
勝新と富三郎というやんちゃ兄弟をコントロールできた鵜匠のような(イメージの)人。