ゴールデンラズベリー賞(以下ラジー賞)がライアン・キーラ・アームストロング(当時12歳)を最低主演女優賞候補にノミネートしたら「12歳の子供になんて事を!」と批判、いや非難が殺到。
ラジー賞は彼女を候補から外すと共に公式謝罪、併せて今後は18歳以下の俳優やフィルムメーカーを候補としないようガイドラインを改めると発表した。
…という「何だかなあ」な話題に(鑑賞前に)触れてしまったために、妙なバイアスが掛かってしまいました。
はてさて、実の所はどうだったのでしょう。
「炎の少女チャーリー」(2022年/キース・トーマス監督)
結論から言うと全てにおいて「普通」「凡庸」。
ドリュー・バリモア主演の84年版は、B級の誉れを塗装上塗り重ね塗りしたトンデモ超大作(製作:ディノ・デ・ラウレンティス)でした。
最大の見せ場である「火球」が糸で吊るした「ガラダマ」でしたし…。
加えて監督が「いいんだよ細けぇ事ぁ」なマーク・L・レスター(代表作「コマンドー」)だったので、悲愁哀愁が彼岸の彼方。
本来お話に重みと厚みを出すためのビッグネームも自ら黒歴史を作りに行ったとしか思えない迷演技(特に重鎮ジョージ・C・スコット)。
これらがミキサーにかけられた結果、褒めるところはないけれど嫌いにもなれない、総じて「あ、何か良い感じ」な仕上がりになっておりました。
リブート版は、基本的に84年版と一緒のお話(とある研究機関の人体実験で弱い超能力を具備した男女の娘にパイロキネシスが発現した事が発覚して追われる身に)なのですが、ハンドルに遊びが無いと言うか、表層的な展開を追っているだけなので、刺さりどころがありません。
追手である研究機関が企業なのか公的機関かも分からず、規模も不明。
前任者が老害として駆逐されたと言って新任のキャップ(グロリア・ルーベン。見たことある顔だと思ったら「ER救急救命室」のジェニーか)が出てきますが、この人ひとりで全仕切りなので、一体何人体制で追撃を掛けているのか…。
浪速のおっかさんみたいな貫禄がついたな、ジェニー。
実験の結果、望んだわけでもない能力が覚醒して…という設定の白眉は「スキャナーズ」「スポンティニアス・コンバッション」ですが、「スキャナーズ」のような激しさや荒涼さも「スポンティニアス~」のような悲しみもこちらにはありません。
カタルシス満開な爆発絵巻にするか、組織の非情さと家族の悲哀を積み重ねた泣ける話にするかどっちかに振り切ってくれれば、少なくとも「好印象」にはなったでしょう(余談ですが、カタルシスがないという意味では金子修介監督による「クロスファイア」も駄目駄目でした)。
とは言うものの、主演がラジー賞候補の演技とは思えず。作品はぺらっぺら(ラストはイミフ)でしたが、それは彼女のせいじゃないし。
ひとつ良かったところ。それは音楽。
担当:ジョン&コディ・カーペンター(コディはジョンの息子)。
元々84年版の監督はカーペンターが務めるはずだったのが、諸般の事情でプロジェクトを離れたという経緯があったそうで(代わりにカーペンターが作ったキング原作ものが「クリスティーン」)。
久々にカーペンター節が聴けたので、それだけで満足です、私は。
★84年版のおさらいはこちら。
★いらん能力持たされた者の受難
★ご参考
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