『君を傷つけたくはないんだ』
(I don't wanna have to hurt you.)
『私は傷つけたいわ。ズタズタにね』
(But I do wanna hurt you. Real bad.)
ベッキーは13歳。スイッチが入ると殺戮衝動が止まらない多感なお年頃。
「BECKY ベッキー」(2020年/ジョナサン・マイロット&キャリー・マーニオン監督)
冒頭、学校と刑務所を交互に映して、そこに違いなどないという事を示す描写は恥ずかしいくらい稚拙ではありますが、好感は持てます。
学校じゃイジメに遭うわ、大好きなお母さんは病気で死んでしまうわ、父親はとっととほかの女(しかも子持ち)に鞍替えした挙句、再婚するとかぬかしやがるわでメンタルだだ崩れ。
新しいお母さん(になる人)、新しく弟(になる子)を呼んだ新・家族パーティに予告なく放り込まれて不機嫌MAX。
ふてくされて外に出たところに、刑務所移送中に脱走した凶悪犯とその仲間が建物探訪。
彼らの目的はこの家に隠してあったドラクエの宝箱が開けられそうなでっかい鍵。
缶(TIN BOX)に入れて隠してあったのですが、中はカラ。鍵を持っているのはベッキー。
脱走犯の誤算は、ベッキーおびき出そうとして父親を拷問し、勢いで殺してしまった事。
湖畔の森林で凶悪犯4人vs少女という図式は「ホームアローン」的であり、トラップ仕掛けて逆襲していく様は「ランボー」のようでもありますが…。
決定的に違うのは、ベッキーの目的が完全ぶち転がしである事。
機知にとんだ微笑ましい仕掛けも、人は殺さないという矜持もありません。
殺ると決めたら殺る。
色鉛筆束ねて滅多刺し、ボートのスクリューでささらもさら。
ベッキーは心にマイケル・マイヤーズを宿した13歳なのでした。
体格差とか腕力差を考えたらかなり無理のある設定ではありますが、そこは躊躇の無さと執拗さで補うということで。
暴力描写は溜飲が下がるのですが、肝心のお話がモヤりまくりなのがちょっと…。
中心にあるべき「鍵」に関する情報が全くありません。
何を開けるための鍵なのか、開けた先に何があるのか、そもそも何故その鍵がベッキーの別荘の地下に隠されていたのか。一切の説明なし。
脱獄囚リーダーがネオナチのようで、例え犬であっても血統は維持すべきで異種交配なぞしてはならない(ベッキー父娘は白人。新しい母と弟は黒人)なんて事を言っているので、そういう思想を後押しする何かなのかもしれませんが、ヒントも無し。完全にマクガフィン。
大金という程度の話なら「人類資金」の縮小版になってしまいますし、持っている事で特殊な力が得られる、みたいなスーパーナチュラルな話だと「レイダース」になっちゃいます。
このまま投げっぱなしかいな、と思ったら続編が公開されるそうです。
「The Wrath of Becky」(ベッキーの怒り…ってまだ怒っとるんかい!?)
★予告編はこちら。
何かベッキー偉いこと身体能力あがってねーか。武器も潤沢でほとんど「ジョン・ウィック」じゃねーか(愛犬の復讐とか動機も被っていますし)。
★ベッキー役のルールー・ウィルソンは(更に若い時)こんなのにも出ていました。
★監督コンビのデビュー作はこちら。
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★そして本日5月7日は本多猪四郎先生(1911~1993)の誕生日!
平成ガメラのTV放送もある日なので、カメ繋がりでこちらを。