『二人が入り、出るのは一人(Two men enter, one man leaves)』
ロックンロールの女王、ティナ・ターナーがお亡くなりになりました。
5月24日。スイスのチューリッヒ近郊にある自宅にて。83歳。
死因非公開ですが、長い闘病生活の末に安らかに息を引き取ったと、代理人が発表したそうです。
私の場合、ティナと言えば音楽よりもこの1本。
「マッドマックス/サンダードーム」(1985年/ジョージ・ミラー&ジョージ・オギルヴィー監督)
ティナの役どころは、物々交換によって成り立ち栄えている砂漠のオアシス「バータータウン」の創始者兼支配者アウンティ・エンティティ。
見るからにアマゾネス。これがピタリと嵌って凛々しすぎ。
タウンの動力源を管理している事で我こそが支配者と豪語している邪魔者ザ・マスター&ザ・ブラスター(マスターはミゼットで鉄仮面を被った巨漢ブラスターの肩に乗っている。「バイオレンスジャック」の兜甲児&ジム・マジンガとどっちが先かは不明)の殺害をマックスに依頼。
方法は暗殺ではなく、正規の決闘。対戦相手はブラスター(マスターはまだ使い道があるから殺したくない)。
舞台は円形に仕切られた闘技場サンダードーム(UFCの原型と言えなくもない?)。
勝利を手中に収めかけたマックスですが、鉄仮面の下から現れた顔が子供と知ってトドメは刺せず。
掟破り(契約不履行)のため、運命のルーレットにより砂漠追放となったマックスですが、行き倒れていた所を独自のルールで生活している子供たちの群れに救われて…。
公開時から「これがマッドマックス?」と狐につままれた人も多く、「エイリアン3」「ターミネーター3」と並ぶ≪やめときゃよかった3作目≫の1本に数えられる本作。
公開時以来約38年ぶりに再見しましたが、これはこれで味わい深い。
実は本作、元々の企画は「マッドマックス」ではなく、1954年出版のウィリアム・ゴールデンの小説「蠅の王」の映画化だったんだとか。
近未来。戦いを避けるために子供たちを疎開地に運ぶ飛行機が墜落。大人が全員死亡して子供だけになった集団は無人島でのサバイバルを余儀なくされ…。
仲間割れやら殺し合いやらの果てに生き残りが大人に救出されるのですが「この子供を発見する大人はマックスだ」とジョージ・ミラーが提案した事で急遽「マッドマックス」スピンオフみたいな内容になったんだそうです。
つまり、見た人の多くが首を傾げた「砂漠の子供たち」のシークエンスこそが元々の骨格で、前半のバータータウンと終盤のバギーチェイスが「付け足し」だったわけです。
クライマックスだと思えば物足りないですが、付け足しサービスだと思えば大満足なカーチェイス。
言われてみれば、マックスのアイデンティティってほぼ無視されていますね。名乗るのもマスターと初対面の時に1回だけ。
「2」でジャイロ・キャプテンを演じたブルース・スペンスが出ている(しかも飛行機乗り)のに、全くの別人物になっているのも軸足が「マッドマックス」ではなく、「蠅の王」だからなのかもしれません。
私の印象は≪構成がまんま「十戒」だなあ≫だったのですが、本質は「蠅の王」だったんですね。
そう思って観れば、また印象が変わってくるかもしれません。「あれはハズレだったよなぁ」と思っている方は勇気を出して再見してみてください(やっぱ駄目だぁ、になっても責任は取りませんが)。
個人的にはあちこちに挿入されていた日本文化的なもの、が新鮮でした。
お話の締めは勿論ティナ・ターナー。
『達者でな(Goodbye, soldier.)』
オットコ前な姐さんでありました。
謹んで哀悼を。
★ご参考~やめときゃよかった(でも結構好きな)3作目。
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