『今日は、普段やらない事を沢山しました。まるで、普通の人生みたいです』
普通の人生がちょっとだけ、そうちょっとだけ他の人より遠い男と女…がまさかの人生大勝負。
「結婚するって、本当ですか/第1話・私と、結婚しませんか?」(2024年10月3日TOKYO MX放送/山内東生雄演出)
このタイトル見て即座にダ・カーポが浮かんだ人はアラ還です、というしょーもない年齢ネタはさておき…。
全国に支店を持つ大手旅行代理店JTC。今日も窓口は大盛況。
若い頃、JT●さんには国内旅行から新婚旅行、海外出張までお世話になりましたが、今でもこんなに賑わっているのでしょうか。
カウンター奥の別室は企画部。お客様とは直接接しない(コミュ障でもできる)裏方部隊。
その中に在ってひと際地味オーラを放っているのが、入社2年目の大原拓也(おおはらたくや)とその先輩の本城寺莉香(ほんじょうじりか)。
仕事ができないわけではないですが、対人関係がちょっと苦手(大原くんは反応が半歩遅れるために会話に乗れない。本城寺さんは「つい見つめてしまう」癖のせいでガン飛ばされていると思われている)。
本城寺さんは「塩対応の佐藤さん」がそのまま大人になった感じですね。
右がコミカライズ版の佐藤さん。
大原くんの癒しは猫。他の猫にいじめられてボロンチョになっているのを拾って来た。名前はカマ。
『カマとこうしているのが一番楽でいいや』
同居人はひざ、ときどき、頭のうえ。
本城寺さんの癒しは地図。広げて眺めて夢想してイマジナリートリップ。
『こぉんなに楽しくて435円!地図って最高じゃあ!』
そんな二人を直撃した晴天の霹靂(←絶対書けない)。
JTCアンカレッジ支店開店! しかもその支店長はこの支店から出す!?
単身赴任にしては遠すぎる距離。よって、候補者は独身者限定とする。
北米ではありますがアラスカはほぼ北極。日々是越冬(因みに原作では「シベリア支店」と言う更に過酷な条件となっておりました)。
ぼっちの安住崩壊の危機!
『アンカレッジまで5,500km…遠すぎる! 日本でもコミュニケーシヨン不全の私が、アラスカなんて無理! それに蚊も恐ろしく大きいらしいし…』
いいのわたる氏の「北米縦断記」によれば、
ツンドラに乗ったコチラの蚊は気温が低くてもめちゃ元気。サイズは日本の2倍でキロ6分ペースで走っても大集団で追いかけてきます。
それもうパニック映画じゃん!
『アラスカって寒いんだろうなあ…』
劇中、本城寺さんはアラスカの夏の気温(18℃)を大原くんに教えていましたが、いやいやいや、こういう時に見るのは最低気温でしょ。
アンカレッジの1月の平均最低気温はマイナス11.4度です。最低気温記録はマイナス39度(2月)。
因みに1月は平均最高気温もマイナス5.2度です。ざっくり言って冬の八甲田山山頂と同レベルです。
全身顔だと思っても駄目。無理。絶対。
どうする!? そうだ、赴任候補者は独身者。独身でなくなればいい。そう、偽装結婚。しかし結婚には相手が必要。こんな話に乗ってくれる人なんか…。
休みの日、偶然公園で出会った大原くんは週明け、辞意を表明すると言う。カマと暮らせなくなるくらいなら無職を選ぶ。それなら、
『大原くん、私と結婚しませんか?』
『え!?』
『こう言ってはなんですが、私たち社内で凄く地味です。私たちが結婚すると言っても、皆の関心を引くとは思えません。アンカレッジ支店開店は1年後。結婚すると言って数か月を乗り切れば、転勤の話はなくなり、その頃には私たちの結婚を気にする人はほぼいなくなるはずです。有耶無耶の内になかった事にしても、多分大丈夫でしょう』
大丈夫じゃありませんでした。
報告聞いた恋愛脳上司は大喜び。その日のうちに支店内に知れ渡り、夜にはサプライズパーティまで。
一瞬で外堀が埋まってしまいました。戻る道無し出口無し。
唐突過ぎる結婚話に疑念の視線を投げかける上司でしたが…
『急すぎるのよね。この結婚。この時期、このタイミング、実に怪しい。あの二人…デキちゃった結婚ね!』
おい! 疑う所そこかよ!?
引き返せないのなら進むしかありません。話にリアリティを持たせるためにはきちんとしたサイドストーリーがないと。
休日、MM地区に出向いて横浜を舞台にした初デート、プロポーズのストーリーを練り上げる本城寺さん。
まずは馴れ初めか…。
想像上のデートをするため、大原くんのイメージを召還したら…
『なんて事なの…大原くんの顔を思い出せない』
もやっとぼやっと大原くんを連れて歩いていると、本物の大原くんが合流。
プロポーズの想定場所は観覧車(婚約指輪まで用意して仕込みは万全)。
しかし、プロポーズの言葉をその場無茶振りされた大原くんは答えられず(「結婚してください」という一言を飲み込んで)保留。
視線を夜景に移した本城寺さん。
『今日は、普段やらない事を沢山しました。まるで、普通の人生みたいです』
「普通」のハードルですらこんなに高い。結婚なんて見上げる首が折れそうです。