まずは冒頭の絵面をご覧ください。
今どきスマホアプリでももっとまともな合成ができるであろう「雨」に関してはサラッと流していただいて、この男は何をしようとしているのでしょう?
答えは「悪魔ザメの討伐」。
子供を含む多くの人間を喰った闇の邪悪な力に支配されている悪魔ザメを屠らんと待ち構えているところなのです。
サメを?浮き桟橋で?
船で沖に出ないの? 特におびき出している訳じゃないよね?
あと手に持っているモップの柄よりも短い棒きれは何だい?
銛? いやいや、それじゃ海面まで浮いて来たアジにだって届かないぞ。
紐ついてないから1回投げたらなくなっちゃうじゃん。
しかし、そんなこちらの心配をよそにこの男、ただの一突きで悪魔ザメを倒してしまいます。
えー普通のサメだってそんなちょろっと小突いたくらいじゃダメージひとつ与えられないんじゃない? しかも相手は邪悪な力に支配された悪魔ザメなんだろ? ただの棒切れと見せかけて実はメギドの短剣が先っぽについていたのか。
で、この男、屠ったサメの歯を1本抜いて(サメの歯って素手で簡単にもぎ取れるのか? 歯槽膿漏とかだったのか?)、御守と称してサメのぬいぐるみに押し込むと明らかにぬいぐるみより小さい段ボール箱に無理矢理ねじこんで別れたカミさんの所にいる息子にプレゼントするのでした。
という最初のシーンだけで「?」が大名行列。流石です。
「トイ・シャーク」(2022年/マーク&アンソニー・ポロニア監督)
原題は「DOLL SHARK」。ぬいぐるみを表す単語としてはこれで正解なのでしょうが、何か語呂が悪いですね。おもちゃのイメージが強くなりますが「トイ・シャーク」の方が据わりは良いような気がします。
で、この「悪魔ザメの邪悪な力が宿った」ぬいぐるみシャークが、クソな人間を次々喰い殺すというハート・ウォーミングなストーリー。
殺戮に及ぶ時はちゃんと邪悪な顔になります。
必然的にぬいぐるみ相手のひとりリアクション芝居になるわけですが、相手がぬいぐるみだと絵面がシュールで逆に不自然さを感じません(←パンチドランカー状態)。
特に褒めるところの無い「いつもの」ポロニア作品ですが、今回は見どころが3つも。
❶ぬいぐるみを贈られた息子がなかなかに可愛い。
❷無駄にハードボイルドな(ちょっとかっちょいい)カットがある。
❸ぬいぐるみのキャラクター元になった劇中テレビアニメ「SEA SHARK SWIM」が割と良く出来ている(歌が軽く電波系)。
折角なのでポロニア作品を蔵出ししておきましょう。
最新作「パンダザウルス」か…観たいな。