『何をしていた? 3日も連絡がとれなかったが』
『今日は何曜日!?』
『木曜だ』
『そんなのあり得ない。選挙は終わった?』
『火曜にね』
『勝ったのは…?』
『オバマだよ』
事実と作り話を区別し、都市伝説やフェイク・ニュースの裏を暴くピッパ・バーンウッド。
騙されては駄目よ。ロズウェル事件(1947年7月にニューメキシコ州ロズウェル付近で墜落したUFOを米軍が回収されたとされる世界で最も有名なUFO事件)は墜落した気球を宇宙船と勘違いしただけ。
そんなピッパに接触してきたひとりの老人リチャード・アンダーソン。彼はマジック(MAJIC)に属していると言う。
会話は支離滅裂。どう見てもボケ老人。どう聞いても妄言。
しかし…。
「アンビリーバブル レプティリアンVSグレイ」(2019年/エリン・ベリー監督)
ひっどい邦題です。作品中にはレプティリアンもグレイも出てきません(正確には「こいつ実はレプティリアンなんじゃね?」と思わせるカットが一瞬挿入されますが、それとてピッパの幻覚の可能性大)。
原題は「MAJIC」。
『マジックの調査をしているのか?』
『マジェスティック12のこと?』
『マジェスティック12やMJ12とは名乗らない。我々はMAJICだ』
諸説ありますが、MAJESTIC12は、ロズウェル事件に対処するためトルーマン大統領が設置したとされる「宇宙人に関する調査や、宇宙人との接触や交渉を秘密裏に行ってきた米国政府内の委員会」。
「世界を陰で操っている」とも言われている都市伝説の大ネタです。
アンダーソン曰く、グレイはレチクル座ゼータ星から来た我々(アメリカ)の味方。
レプティリアンはアンタレス星から来てソ連と結託している。つまり、冷戦はエイリアンの代理戦争だった。
正にアンビリーバボー。証憑無しでは、眉につけた唾が垂れて目に入って何も見えなくなるような与太話。
アンダーソンが持っていたのは、50年前の自分と自分をヘッドハンティングした男、レイモンド・スペクターが並んで写っている写真と、レプティリアンの盗聴を防ぐから肌身離さず持っていろと手渡された「スペースペン」(どう見てもただのボールベン)のみ。
純度100%の与太話ですが…。
後日、アンダーソンからの(昔のスパイ映画のようにドア下から差し込まれた)手紙に誘われてアンダーソンの自宅(森のコテージ)を訪れたピッパですが、帰り道の記憶が無い。
気がつけば自室。金曜の朝に戻ったはずなのに今日は日曜。訪ねてきたエージェントは自分の子供の話をするが、子供がいたなんて聞いていない。
『もう一回聞くが、老人の名前は?』
『リチャード・アンダーソン』
『チェイニーの統合参謀本部議長の?』
『チェイニーは大統領じゃないでしょ』
『…? ゲイリー・ハートもか?』
『ゲイリー・ハートも大統領じゃない』
『ふざけてるのか?』
PCで検索。ディック・チェイニー、第41代大統領。2001年から現職。
ゲイリー・ハート、第38代大統領。
1963年にケネディは暗殺されていない。跡を継いだのはロバート・ケネディ。続いてジミー・カーター。ゲイリー・ハートが引き継いで、その次はビル・クリントン。
ニクソンもフォードもレーガンもブッシュ(シニア)もいない。
…私の知っている歴史と違う!
ああ、やっぱりSFは発想と語り口なんですね。予算は(大筋において)関係ないです。
お話としては小ぶりで「トワイライト・ゾーン」の一篇をブローアップした感じですが、いたずらに風呂敷広げない辺り(やり逃げとも言いますが)好感度大な小品(82分)でした。
★ロズウェルで大騒ぎの作品と言えば、
★発想勝負の低予算SFと言えば、