
予告の印象は「色ボケソファが殺戮絵巻」で、直球のお馬鹿ホラーだとばかり思っていたのですが、実態は「心に江戸川乱歩を宿した」スーパーナチュラル人間椅子でした。
そう言えば「キラー・ジーンズ」もお馬鹿ホラーだと思っていたら、スパイスにフェアトレードをまき散らした発展途上国搾取ホラーでしたね。
侮れません「キラーなんとか」。
「キラーソファ」(2019年/バーニー・ラオ監督)
出会った人間(必ずしも異性に限らない)を魅了してしまう力(一種の呪いですね)を持ったダンサー、フランチェスカ(ピイミオ・メイ)の元に届けられたソファ(一人掛けなので正確にはリクライニングチェアですが、タイトルに合わせて以降も「ソファ」と呼称します)。
使い心地は満点。

極楽です(ソファが)。
しかし、そのソファは、フランチェスカに執着するあまり接近禁止命令を受けた(そして現在行方不明と言うか多分殺されている知人)フレデリコのもので、フレデリコによるブードゥーの呪いがかけられておれました。
資料によっては「死んだ友人のソファを譲り受け」とか書いてあるものもありますが、自分に執着して接近禁止命令まで出させた挙句殺された奴の遺品なんか受け取るか?
通販かネットの出品物を買ったと考えるのが普通ですが、であれば、メーカー(or店舗)倉庫(or出品者自宅)から出荷された商品をフレデリコがインターセプトしなければなりませんし、フレデリコ自身が出品者だとしても、それをフランチェスカが購入する保証はどこにもありません。
フレデリコが匿名で出品し、フランチェスカがそうとは知らずに購入(注文確認後、呪いの儀式を行った)場合のみ、違和感のない出荷と受け取りが可能になりますが、そこいら辺の説明が一切ないので、真面目に観ているとモヤモヤが残ります。
あと、ソファが窓を開けたり、ドア閉めを阻止したりするのにスプリングのようなものを使うのですが、先っちょのアップしか映らないので、それが本体のどこから伸びているのか、まったく切り離されたものをロケットパンチ的に遠隔操作しているのか分からず、やはりモヤモヤが残ります。

殺しの道具としても使用しています。
相手がブードゥーの呪いなら、当然、対抗する呪術師が必要。
フランチェスカの親友マキシ(ナタリー・モリス)のお爺ちゃんがその「力」を持っているのですが、簡単な霊視する以外は調べもの(その筋の専門家のビデオ解説見ている)ばかりで大した活躍無し。
このお爺ちゃんのお父さん(幾つだよ!?)はホンモノの霊能力者らしいのですが、息子からの相談電話に「お前にゃ無理だから近づくな」。クライマックスで登場するのかと思ったら電話切った後出番無し(もの凄い肩透かし)。

フレデリコが呼び寄せたと思われる悪霊はディブク(Dybbuk)。
東欧のアシュケナージ系ユダヤ人の文化において信じられている悪魔憑きを行う悪霊です。
自殺などの罪業のため輪廻を行う事ができず、現世をさまよい人に憑依し、憑いた人間に異常な言動をとらせる…んだそうです(ありがとうWikipedia)。
お話とキャラをもちっと整理してくれたら「チャイルド・プレイ」×「スケルトン・キー」という割とニッチなジャンルの佳作になったと思います。
以下撮影裏話。
ソファの値段はニュージーランドドルで100ドル、USドルで64ドル程度だったそうです。
大した値段ではないのに撮影用ソファはひとつだけ。買う金がなかったのか全く同じものを手配できなかったのかは分かりませんが、とにかく低予算。
このため「ソファが窓から飛び降り、車に乗っている人を押しつぶすシーン」「ソファが血を吐くシーン(エクソシストの緑のゲロリスペクト)」を撮影することができませんでした(替えが無いのでスエードを汚せない)。
うう…悲しいなあ低予算。
因みに主要スタッフは、制作、監督、脚本、撮影、編集全部バーニー・ラオ。低予算の鑑です。
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