
『外には何もない…外には何もないんだ』
1973年、ルーテル教会がジョージ・A・ロメロ監督に1本の映画製作を依頼しました。
お題は「年齢差別」と「高齢者虐待」。啓発・啓蒙用の教育映画です。
ロメロはニュージャージー州郊外の小さな町、ウェストビューにあるウェスト・ビュー・パークで3日間かけて撮影を行い、ルーテル教会に納品しましたが、ルーテルはこれを数回使用しただけで封印。
以来、2001年のトリノ映画祭における「ロメロ回顧録」で上映されるまで28年間門外不出。
この時使用された16mmプリントがロメロと彼の妻スザンヌ・デスロチャー・ロメロに送られたのが2017年(ロメロは同年7月16日永眠)。
スザンヌは、はジョージ・A・ロメロ財団と共にニューヨークの映画保存団体インディコレクトにフィルムの4K修復作業を依頼。
2019年10月12日、修復作業を終えた『アミューズメント・パーク』がピッツバーグでプレミア上映されました。撮影から実に46年の月日が経っておりました。
何故、ルーテルはこの作品を封印してしまったのでしょう。
内容は一言で説明できます。「一人の老人が遊園地でひどい目に遭う」
「アミューズメント・パーク」(1973年/ジョージ・A・ロメロ監督)
白い椅子以外何もない白い壁の部屋。座っているのは白いスーツの老人(リンカーン・マーゼル)。顔に怪我をしています。スーツも汚れ切って息も絶え絶え。
そこに現れたもうひとりの老人(マーゼル二役)。白いスーツをパリッと着こなして顔には希望が満ちている。
これから外に行くと言う。
『楽しくないぞ。外なんて楽しくない』
『そうですか。でも私は自分の目で確かめてきます』

白いドアを開けるとそこは大勢の客で賑わう「アミューズメント・パーク」。
老人は期待に胸膨らませて遊戯施設を回っていきますが…。
老人は行く先々で、理不尽な差別を受け続けます。収入によって、年齢によって。
パークは遊戯施設だけでなく、リハビリ施設や病院のようなものもあり、一般社会の隠喩と暗喩とカリカチュアとメタファーが分かりやすくてんこ盛りになっています。
老人は怪我をして押し込まれた治療施設のようなところでもテキトーな処置をされた揚げ句、「用紙がないから並びなおせ」という理不尽な扱いを受けます(でも杖はもらえる)。

若者に殴られ、客に追われ、チケット奪われ、金品スラれ、ボロボロになって元の白い部屋へ。

そこに入ってくる元気な自分。
『私は外に行きますよ』
『外には何もない…外には何もないんだ』
53分。「救いって何?」な差別と虐待の万華鏡。強すぎる毒は薬にはなりえないという見本。そらルーテルも「なかったこと」にしちゃいたいでしょう。
にしても、ルーテルは何故この仕事をロメロに持ち掛けたんでしょう。
ロメロが作ればこうなるに決まってるじゃない。
46年の長きに渡って陽の目を見なかった幻の作品がAmazonでお手軽に鑑賞できる。
良い時代になったものです。
★本作と同じ年にロメロが撮っていたのがこちら。
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★本日のTV放送【20:00~BS12】