
たけしがこういう(ある意味しょーもない)作品を撮れるということは、現在の精神状態が極めて安定している、という事なのではあるまいか。
「Broken Rage ブロークン レイジ」(2024年/北野武監督脚本)
前半が一匹狼の殺し屋が警察と取引して覆面捜査官になり麻薬組織に潜入する話、後半は全く同じ話を全編ボケ倒しのお笑いコントにするという二重構造。
前半が「シリアスパート」、後半が「コメディパート」って事でいかにも真逆なものをセットにしているように見えますが、本質的には同じもの(に私には見えました)。
前半と後半を入れ替えても(コメディパートが「リアル」で、シリアスパートが「パロディ)作品としては成立すると思います。
前半は「直接的お笑いが無い」という意味では「シリアス」かもしれませんが、だからと言って「リアルか?」と言われると全然。
「いやそれはねーだろ」の佃煮。全体として「質(タチ)の悪い冗談」として括れます。
殺し屋ねずみ(たけし)は行きつけの喫茶店で謎の依頼人Mからの指示書を受け取り、殺しを実行するのですが、キャバクラで顔晒して銃乱射してそのままほいほい退散、物陰でも無い所で着替えてチャリで帰宅。ないわー。

覆面捜査官になったねずみがバーで組織幹部の前で仕込みの刑事(秋山準じゃん!)と喧嘩。腕っぷしの良さを見込まれて組長のボディガードに…。ないよ、ないない。
清塚信也氏による伴音がいかにもクライムサスペンスなので、つい騙されてしまいますが、前半も十分コメディです。
で、後半。ちょっと途方に暮れる滑り具合なのですが、徐々にこの空気感が癖に…。
特にねずみを逮捕して覆面捜査官に仕立てる刑事コンビ、浅野忠信&大森南朋(「殺し屋1」コンビだ!)がいい。
『俺たちに掛かって落ちなかった奴はいない』と豪語する大森。繰り出す拷問は自らが行う危険な芸(と言うか奇術)。
長剣を喉に挿し、5寸釘マットの上に寝転がった浅野の腹に板を乗せて大森がでっかいハンマーで叩く(タイトル画像)、広げた手の指の間に高速でナイフをトントン。

『うわ、危ない、やめろ!』
『どうだ、怖いだろう。早く吐かないと(浅野が)大変なことになっちゃうよ』
取り調べの新しい形を見ました。
組長(中村獅童)と幹部(白竜)のコンビもなかなか。
「ここでそれ出すか!?」というたけしの“大技”に(恐らく素で)笑っている白竜が微笑ましい。

椅子取りゲームの司会役、劇団ひとりがちょっとデヴィッド・リンチっぽい佇まいでした。
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