デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【仲間にかける時間が】ロックは淑女の嗜みでして ♯7-8【ムダなワケないでしょ!!】

「獅子の門」という小説があります。著者は夢枕獏。連載開始は1984年。

格闘技に触れて成長していく少年たちの群像劇です。

主人公の一人、芥菊千代は、内向的で対人恐怖症(所謂コミュ障。登場時中学生)でしたが、空手家・鳴海俊男と出会った(その技の一端を見た)のをきっかけに何かが変わりました。

自分もあのようになりたい。早朝練習中の鳴海を訪ねますが、言葉が出てきません。

鳴海は「空手を習いたければ道場の窓口に行って入門手続きをすればいい」。しかし、菊千代は動きません。空手を習いたいのか、と訊けば頷くが、入門したいのかと言えば首を振る。もどかしいほどに話が進まない。

ここで鳴海は思い出します。自分が何を思い、何故、空手を始めたのか。

『おまえも強くなりたいのか』

拳を握り泣きながら頷き続ける菊千代。

『よし…俺が教えてやる』

格闘経験は勿論、同年代の少年に比べ平均以下の体力しか持ち合わせていない菊千代が持っていたものは、異様に強い右腕とマイペースで走らせた時の持久力。

止めろと言われるまで無限に続ける反復練習は、やがて菊千代を人間凶器に変えていきます。

何の話してんだよ!? と思われるでしょうが、本作の院瀬見ティナを見ていたら、つい思い出してしまったのですよ。

「ロックは淑女の嗜みでして/第7-8話」(2025年5月15日、22日TBS放送/綿田慎也監督)

鈴ノ宮りりさ(リリー)と黒鉄音羽(以下オト)が、町内会の吹奏楽部コンサートにヘルプ参戦してから周囲の状況が急転直下。

オトと旧交のあった白矢 環(しらやたまき。ライブハウス界隈では名の知れたギタリスト。以下シロ)が、オトにヘッドハンティングラブコール。

『あのツインテを今すぐ捨てて私と組め』

オトはリリーと別れる気は無いと拒否。逆にリリーに触れてもらうため、こっちのバンドに一時加入してはどうかと提案。ここにシロがヘルプで入っているバンド「ビター・ガナッシュ」が異議申し立て。

メジャーデビューも夢ではないところまで来ている今、シロに抜けられるのは大打撃。どうしてもと言うなら「対バン」でバトルだ(そっちが勝てば脱退を認めるが、負けたら一生ビター・ガナッシュのメンバーになってもらう)。

そんな話に乗るメリットがどこにある?とシロが却下しますが、対バンという言葉がオトの胸にグッサリザックリ。

『対バン


という訳でリリーのいないところで、ビター・ガナッシュvsシロ&オトのバンドの対バンが決定(しかも半月後)。

一方、オト不在の音楽室にやって来たのが院瀬見(いせみ)ティナ

生徒会副会長にしてハイブランド化粧品メーカー創業者の娘。自社製品のモデルもこなし、長身で中性的な容姿から「王子」の異名を持つお嬢様。来訪の目的は、

『ボ、ボクを君たちの音楽隊に入れてくれないか!?』

これまでなにひとつ自分の意志で決めた事が無く、周囲に望まれるまま、期待される人物像を演じてきた(外面のいいコミュ障)が、町内会コンサートのリリーの演奏に、ロックに触れて自分を変えたい、本当の自分になりたいと願うようになったようです。

しかし、ロックに関する知識は皆無。楽器はピアノを少々との事なのでキーボードを弾いてもらったらにっちもさっちもどうにもブルドッグ(昔、フォーリーブスってアイドルがいてね…)。

こりゃ無理だわ、さぁてどうしたものか、とリリーが悩んでいるところにオトがシロを伴って帰宅。降って湧いた対バン企画に唖然呆然。初対面でヘタクソ呼ばわりしたシロに怒髪衝天。


負ければシロは一生ビター・ガナッシュの奴隷。勝っても対バンを通じてシロがリリーを認めなければオトはリリーを捨ててシロと組む。さらに振り向けば処置に困ったキーボード候補。

全方位待ったなし。

初めて聴くシロのギターに戦慄するリリー。実力差ありすぎ。

ギターはツインになるのかと思いきやシロはリリーの実力を見極めるためにベースに回るという。

この状況で素人の出番などないはずなのに、オトがティナの加入をあっさり承認。

『私たちと交わりたいと熱望しているなんて相性が良さそうじゃありませんか!』

しかも、その指導をリリーに一任(丸投げとも言う)。背水なんてもんじゃありません。

初めて体験したシロのベースは瞬時にリリーのギターを搦め取り…

リリーはBDSM好きだなぁ。


そのシロは初手からティナの存在そのものを否定。『凄く頑張っていらっしゃいますし』というオトのフォローにも、

『下手な頑張りの方が始末が悪いこともある』

ああ、昔いた会社の上司も言っていました。

「仕事できない奴の頑張りなんか迷惑でしかない」と。

不安定な上にロックのビートにまるで乗れていないティナのキーボード。

対バンまで2週間。成長の跡は見えるけど対バンのハードルは高い。自分もシロに認めさせるだけの練習をするとなると、これ以上の時間をティナに割くわけにはいかない。穏便にバンドを抜けてもらおう…そう思って声をかけたらティナはキーボードの前で立ったまま眠っていました。その両手には消炎鎮痛の湿布が。


自分にもあった。全部の指に絆創膏を巻いて決めたフレーズを弾ききるまでギターの練習をやめなかったことが。同じだ。見捨てるなんてできない。

対バンまで1週間。何とか完奏出来るようになったので手合わせ。4人編成による初の交わり。そこにあったのは目を、いや耳を覆う実力差。音の暴力。当然、シロの判断は

『おい、ツインテール、さっさとそいつを追い出せ』

ビター・ガナッシュはアホだが下手じゃない。本気でプロを目指している連中だ。

『ロックをまともに聴いた事もない、キーボードも初めて触ったようなクソ陰気ピアニストもどきが…0点だ!お前のキーボードは』

トドメは、

『自分探しは余所でやれ』


シロの意見って全く以て正論なんですよねえ。一生懸命な下手糞がメンバーの同情を誘い、実力と夢にぶら下がって、終いにはそのチャンスを妨害し、下に引きずり落とすというくだりの説得力。

『お前の我儘が周りを殺すんだよ』

私たちを殺すつもりか!?の一言に折れ、その場を去ろうとするティナの手を掴むリリー。『それでいいの?』

『仕方ない。ボクが辞めないと君たちに迷惑がかかるんなら…』

それは自分がギターを捨てないと母親に迷惑が掛かるという自身の境遇に重なり…。

『いつかリリサ君と一緒に思い切り本当の自分を曝け出したかったな』

『いい加減にしろ。そもそもお前のような魅力のない奴にロックは分不相応なんだよ』

シロの追い打ち駄目押し死体にムチ打ち。

『…うっさいわね!やってみないと分からないじゃない! 上等よ…5日頂戴、5日でティナさんにあんたが納得できる演奏をさせてみせる!』

『お前は貴重な時間を無駄に捨ててるんだぞ!!』

『仲間にかける時間が、ムダなワケないでしょ!!』


『ひとつ聞かせろ。お前はどうしてそこまでそいつをバンドに残したいんだ?』

『自分らしく生きたいと足掻く奴とロックしたいからよ!』

足掻く仲間にオトが授けた秘策。元々の音符から弱拍や裏拍などの音符をカットして印象を大きく変えずに弾く音を少なくする。難しくて弾けないのなら、簡単にしてしまえばいい。


5日後、ティナの演奏に一旦は駄目だしをしたシロですが、その秘策がオトの発案と知るや態度軟化。

『え?…もしかして悩んでる? 音羽がああ言ったから!?』


シロさん、オトLOVELOVE萌え萌えなんですね(拗らせツンデレだ)。

めでたく(?)シロのOKを得たティナを加えた四人編成で迎えた対バン当日。

今回、どのパートも練習風景を一切映しませんでした。全ての音は対バン本番で描く…演出もハードルをごりごりに上げてきました。

次回が楽しみです。

にしても今回は全てがオトの手のひらの上でしたね。

 

おまけ


シロにもありました。可愛かった頃…じゃなくてロックに目覚めた瞬間が。


このギタリスト、誰だったんでしょ。気になりますね。

 

 

 

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