デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

【7月19日は橋本忍忌】幻の湖【ついに禁忌に触れる…】

本日7月19日は脚本家・橋本忍大先生(1918~2018)の命日。橋本忍です。

代表作は≪書かれたもの全部≫と言っていいくらいの傑作・名作製造機。

曼荼羅畑で取り上げた≪黒澤以外≫の作品だけでも「切腹」「仇討」「大菩薩峠」「日本のいちばん長い日」「砂の器」「八つ墓村」など多数。

そんな先生が唯一残した黒いシミ。破綻と破綻のミルフィーユ。難解というレベルを余裕でオーバーランしてほとんど電波の領域に踏み込んだ問題作、それが、

「幻の湖」(1982年/橋本忍監督・脚本)

東宝創立50周年記念作品。第37回文化庁芸術祭参加作品。

日本映画最大のヒットを狙って作られた超大作ですが、結果は…公開19日で打ち切り(公開日は9月11日!←災厄の日)。

本作、予告が良く出来ておりまして。

ブルックナー交響曲第9番短調;第2楽章「スケルツォ」を景気よく流しながら、過去(戦国時代)と現在、そして宇宙空間までを矢継ぎ早につぎ込んだ特報は、全くストーリーが掴めないながら「何か凄そう」という期待感だけは煽ってくれました。

そして迎えた試写会当日(1982.7.28イイノホール)。

2時間44分フルマラソンを終えた客席には「終わった」という安堵、「何だったんだ一体?」という困惑、そして「どうしてくれるんだよ、この空気」という振り上げた拳の下ろし所のなさが渦巻いておりました。

近年、再評価の兆しがあるやに聞いておりますが、いやいやいや、これは「天国の門」とは種類が違います。普通に「駄目」映画です。

舞台は現在の滋賀県。主人公は雄琴のソープ街(当時はトルコ街)で働くソープ嬢(当時はトルコ嬢)・道子(源氏名お市。1627人のオーディションを勝ち抜いた南条玲子)。

彼女は琵琶湖の西側を愛犬シロと走るのが唯一の楽しみでしたが、そのシロを何者かが惨殺(出刃でザクザク)。

凶器の包丁と様々な証言をもとに犯人が東京の作曲家・日夏というところまでは辿り着きましたが、犬殺しても器物破損だし書類送検が関の山。

示談を提案されましたが『金で解決なんて冗談じゃないわ!』で東京に乗り込んだ道子に日夏の住所と趣味(マラソン)を教えてくれたのがソープランドの元同僚ローザ。

この人、航空機の爆音聞いて≪ファントムではなくイーグルだ。イーグルはすでに実戦配備についている≫とか言っている変な人ですが、正体は「日本における大衆産業」を調査するためソープ嬢として潜入していた米国の諜報員でした(すみません、理解不能です)。


日夏の趣味がマラソンと知った道子は自分も得意なマラソン「倒れるまで走らせてやる」と決意(え、どういう理屈?)。

日夏がマラソンに出かけると後をつけて執拗に煽りますが、都会の空気に不慣れなため、ペースを乱して途中で断念。雄琴リターン。

え~っと、復讐終了? 裁判はやらないの? 自宅突き止めてるのにマラソン負けたら帰郷?

雄琴では、織田信長に殺され葛篭尾崎(つづらおざき)に沈められたお市(近江の浅井長政の妻)の侍女みつの魂を鎮めるため辛気臭い笛吹いている長尾(隆大介)とか、道子にプロポーズする銀行員・倉田(長谷川初範)とか出てきて無駄に話の幅を広げていますが、どうでもいいです。

ソープに戻ってしっぽり働く道子ですが、何とそこに日夏が客として来店。

瞬間核融合炉と化した道子は、常に持ち歩いている「シロを殺した出刃包丁」を抜いて日夏に突進。逃げる日夏を追ってそのままマラソン大会に突入。

この時、日夏を追いかけて店内の階段駆け降りる道子の動きが絶品。マラソンのシーンより見事な足さばきでした。


黙々と走る日夏と地の利を生かして日夏のコースを読んでつかず離れずの距離を保って追走する道子。

(走れ、もっと…追走者は目標にぶら下がっているだけだ。落ちる。今に、今に落ちる…いや、振り落としてみせる)

いやいや、後ろから出刃包丁持った女が追いかけてきてるんだぞ。なに平和にマラソンの作戦練ってるんだよ。交番見つけて飛び込めよ。

延々続くマラソンに二人とも疲労困憊(いやホント、何やってんの君たち?)。

途中の階段で力尽きた道子がズルズルと滑り落ちていく所がちょっと「蒲田行進曲」っぽくていい感じでした。


その後、シロの幻影に引っ張られて持ち直した道子が、遂に足の止まった日夏に追いつき追い越し…。

『勝った…』


あ、うん、そうだね。勝ったね。復讐がマラソン勝負に置き換わったって事でいいのかな?…っと思ったらやにわに帯に刺した出刃包丁引き抜いて日夏に走りよると体重乗せた一撃をどーん!。

結局、殺すんかい!? しかも1回抜いて更に助走つけておかわり。

出刃が日夏のドテっ腹2回抉ったところで、スペースシャトルがどーん!

何と辛気臭い笛吹きの長尾はNASAアストロノーツでした。

地上185kmの位置で宇宙塵の採取をするために船外に出た長尾は「鎮魂の笛」を琵琶湖の上に。

静止軌道上に笛を置くことで、いつか琵琶湖が枯れたり移動して海に繋がるなどして消え去り「幻の湖」になっても、そこに琵琶湖があった事をこの笛が指し示し続ける…ってなオチなのですが、すみません、ちょっと何言ってるのか分かりません。

衝撃だったのは、その絵面。笛と琵琶湖は185km離れているはずですが、琵琶湖のジオラマ模型の上に笛を置いたようにしか見えません(この遠近感の無さはスクリーンで見ると一層「映え」ます。※特撮監督:中野昭慶)。


道子はシロの仇は取れましたが、殺人犯として刑務所行きですよね。代償デカすぎね?

砂の器」「八つ墓村」の流れを意識した芥川也寸志の美しく荘厳な音楽が画面にびた一文合っていなかったのが、作品のトンチンカンぶりを上塗りしておりました。

★大先生の真の実力を確かめたい方は以下を。

 

 

 

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