
やりたい事も行きたい所もなく、夫にも子供にも愛を感じず、自分が何者かも分からない。
唯一獲得したアイデンティティは…“逃避行中の殺人犯”。
「リバー・オブ・グラス」(1994年/ケリー・ライカート監督)
1962年生まれのコージー(レサ・ドナルトソン)は30過ぎの主婦(つまりお話の時間軸は90年代)。
マイアミと言えば聞こえはいいが、海から離れた内陸部の田舎。退屈の中に生まれ退屈の中で歳を取り、結婚して子供を生み…。
どれくらい退屈かと言うと、多分これ👇くらい退屈。

「ダーク・スター」の脳がとろける日常。
父ジミーは犯罪捜査官ですが、とにかく杜撰。レストランのレジ金鷲掴みにして逃げた若造を追いかけて威嚇した所で腰にあるべきものがないことに気づく。
拳銃失くした刑事の映画と言えば黒澤の「野良犬」、ジョニー・トーの「PTU」あたりが思い浮かびますが、この人たちは「盗まれた」。ジミーの場合は「失くした(≒落とした)」。
それも常習犯。ホテルの廊下をピザ抱えて歩いている時もホルスターからポロリ。後ろを歩いていたお姉さんが黙って拾ってピザの上にポイ。
このレベルのうっかり屋さんというと「女がいちばん似合う職業」の桃井かおり姐さんくらいしかおりません。
なんせこの人、尾行中にも落とすし、トイレ入ったらそのまま忘れてきちゃう抜けっぷり(笑えねー)。
トイレの洗面所で(個室に)忘れて来た事に気づいて、後から入った人に拾ってもらうカットの画像が欲しかったのですが、見つけられなかったので、銃と姐さんの予告画像を並べておきます。

ジミーが落とした拳銃は拾得者を経由して祖母とくらす無職の男ハロルドくんの元へ。
人生煮詰まり放題のハロルドくんとコージー姉さんが運命のいたずらで出会って弾いて隠れて逃げて。

うまく行けば「地獄の逃避行」「続・激突 カージャック」「ナチュラル・ボーン・キラーズ」に、破滅エンドになっても「テルマ&ルイーズ」になれたかもしれない二人ですが、いかんせん金が無い。高速に乗るための25¢もない。
なにもかもがどん詰まり。
何も起きない退屈見本市はヌーエヴェルヴァーグのようでもあり、ジム・ジャームッシュのようでもあり。
元ジャズドラマーだったジミーのドラムプレイが良いアクセント。
娘コージーの名前の由来はジミーが好きだったジャズ・ドラマーにあやかったもの。ロック・ファンにとってコージーと言えばコージー・パウエルですが、このコージーは「リトル・ジャズ」の愛称で呼ばれたコージー・コール(COZY COLE)。

パウエルもコールに憧れ、自らの芸名にコージーとつけたそうです。
★ご参考
★本日のTV放送❶【13:40~テレビ東京】
★本日のTV放送❷【20:00~BS12】