『組長、あれはヤクザを殺すように仕込まれた暗殺犬です。危険ですからここを動かないでください』
とある喫茶店。字廻(あざまわり)組の若頭、尾崎(哀川翔)は組長の耳元で囁くと、立ち上がって店の外へ。
そして、可愛いチワワをむんずと掴むと大きくふりかぶって思い切り地面にどーん!
さらに尻尾を持ってぐるぐると振り回して喫茶店の窓にだーん!
窓をつたう血の滴とガラス越しの尾崎の半笑い。
「極道恐怖大劇場 牛頭(ごず)」
(2003年/三池崇史監督)
ヤクザホラーという新しいジャンルを切り開いた1本です。
頭のおかしくなった兄貴分・尾崎を、名古屋に存在するという伝説の「ヤクザ処分場」に運ぶことになった舎弟・南(曽根英樹)の受難の物語。
が、途中、南はうっかり尾崎を殺してしまい、挙げ句に死体が忽然と消失。
南は名古屋という異次元空間を尾崎の死体を求めて彷徨い歩く羽目に。
名古屋の描写がほとんどつげ義春。異文化通り越してオープンスペースな精神病院(これ、クレームが来なかったのか。名古屋人は太っ腹だなあ)。
日本語の台詞を覚えられない外人役者の背後にカメラが回りこんでカンペを大写しにするなど開き直った演出が素敵です。
※写真は驚天動地の輪廻転生を果たすベトベト哀川翔。