『スカし方は一流だな、おっさん』
『てめえの面は二流以下だな、坊や』
破綻×破綻=絶妙なバランスという脆弱さが魅力の映画です。
「ヨコハマBJブルース」(1981年/工藤栄一監督)
お話は「探偵物語」ですが、テイストは「野獣死すべし」×「傷だらけの天使」。
丸山×優作×工藤ちゃんがやりたい放題し放題。職人・仙元誠三が見事な撮影で絵的な破綻を崖っぷちで喰い止めています。
ファミリーの親分・財津一郎は台詞カミ噛み。辺見マリが乗り込む船は氷川丸。推理物としての筋書きも含めて突っ込みどころは数知れず。
そんな穴の数々を濁流の如き力技で無効にしてしまう最終兵器、それが優作の歌声です。
『なんだって探偵なんてチンケな商売始めたんだ?』
『シンガーだけじゃ喰えないからな』
巧いとか下手とかを超越した「雰囲気系」の歌唱、その圧倒的な存在感が、ドラマの不整合性などという矮小な疑問を涅槃の彼方にすっ飛ばしてしまいます。
結局、この映画の印象は「優作の歌がいっぱい聴けた」という頭の悪い小学生の感想文に落ち着いてしまうわけですが、それもまた良しです。