『千利休切腹、山上宗二切腹。古田織部も切腹した。これといった茶の湯者になるには皆、切腹しなければならんのか』
利休が秀吉から「死」を賜ってから27年。謎に包まれた利休(三船)の死の真相を愛弟子・本覺坊(奥田瑛二)と信長の弟・織田有楽斎(萬屋錦之介)が探っていくミステリ仕立ての時代劇です。
生前、死によって茶人としての生を全うする密約を結んだ利休、宗二、織部。その死に様に憧れる有楽斎。
『おれは腹は切らん。腹を切らんでも茶人だよ。はは。はははははは!』
死の密約、その輪に入れなかった男の慟哭、死後27年経って尚師に尽くす弟子。最近、ドラマとはイコール「ホモ」を描く事なのではないかと思っております。
この映画、女が一瞬たりとも出てきません。なんという迷いの無い美しさ。
そして利休・三船。満開の桜を背負って割腹するその神々しさといったら、もう。
「日本のいちばん長い日」同様、三船の割腹は介錯無し。つまり、左脇腹に刺した刃を右一文字に引いた後、首の後に引っかける様に回して頸動脈を斬って自らトドメを刺すやり方です。
織田有楽斎を演じた萬屋錦之介はこの作品が遺作。因みに東京の有楽町の名前は、この有楽斎の屋敷があった事に由来しております。