「キッチン・ストーリー」
(2003年/ベント・ハーメル監督)
時は1950年代。スウェーデンの「家庭研究所」が台所における動線調査を実施。調査対象は何故かノルウェーの独身男性。
動線調査と言っても監視カメラなんか使いません。
なんと台所にテニスの審判台のような脚の長い椅子を据えて、調査員が直に被験者の動きを眼で実測(※写真参照)。
調査にはルールが。「決して被験者と口をきかないこと」
被験者に応募したことを後悔しまくっているノルウェー人イザック(老人)とそれを無言で見下ろすスウェーデン人フォルケ(中年)。
お互い依怙地に閉ざしていた心がゆっくりと開かれていきます。
きっかけは煙草を切らしたイザックにフォルケが自分の煙草を無言で投げたこと。イザックはお礼にコーヒーを。調査台を下りて同じ目線に立つ二人。
フォルケがイザックに発した最初の言葉は「ダンケ」。
(そう言えば「カッコーの巣の上で」で口がきけないと思っていた酋長が初めて発する言葉も「サンキュー」だったなあ・・・)
「過去のない男」は中年男女の不器用な恋愛話でしたが、ここにはもう女すら出て来ません。もう男、男、男(しかも全員中年以上で独身! 話の舞台はほぼ全編通してキッチン!)。
ハッピーエンドではないがバッドエンドでもない、このほんわかした感じはなんでしょう。若い時に観たら「退屈」の一言で片づけてしまったかもしれません。
歳をとるのはいいことです。