今、邦画で1本と言われたら、「砂の器」でも「ゴジラ」でも「仁義なき戦い」でも「パトレイバー2」でもなく、
「大阪最強伝説 喧嘩の花道」
(1996年/三池崇史監督)
メンチ切りまくる学ラン&ファイティングポーズの二人。被るキャッチが、
“のちに彼は日本バンタム級チャンピオンに輝き、もう一人はプロレス界で格闘王とよばれる“
つまり、赤井英和vs前田日明なんですが、この嘘買えない貧乏人はいないでしょう。
東京ドーム。元ボクシングチャンピオン対プロレスラーの異種格闘技戦。その控え室。
通天閣。勝敗の賭けに興じる男たち。その裏で警察に追われている男。そして話は一気に70年代の大阪へ。
一見、ハッタリと大風呂敷で出来ているように見えますが、中身は笑いと涙と胸キュンな青春どついたるねんグラフィティ。
『こんな事いつまでも続かへん。100年経ったら今いる人皆死んでるし。でもできるだけずっとこのままでいたいねん!』
殴り殴られ、惚れて惚れられ、成功する者、踏み外す者。あの時、届かなかった拳を今一度。
なんと言うか、矢吹対ホセの試合前に、少年院のメンバーが集まってくるあのほろ苦さのようなものが詰まっていて、何度観ても(年甲斐もなく)お腹一杯・胸一杯。
『今お前が思うているものとも人生は違う。戦うて行けえ!』
監督本人をして「これ以上のものは作れない」と言わしめた傑作です。
赤井英和モデルの主人公・玉井に矢部享祐(後のやべきょうすけ)、
浜田の飲んだくれ父ちゃん役がシーザー武志でした。