逃げるな。足すな。引くな。 プリズンホテル
単発、連ドラ、オリジナル・ビデオと(この原作に)手を出す人は多いのですが、いかんせん、どれもエピソードの選択と視点の設定が駄目駄目です。
「プリズンホテル」(1997年/福岡芳穂監督)
ヤクザのヤクザによるヤクザのためのリゾートホテル「プリズンホテル」。
ここに出入りする人々の人間模様を描く浅田次郎の連作小説なのですが、本来の主役はホテル・オーナー(木戸組組長)の甥っ子、木戸孝之助。
心がねじれ、ひねくれ、秘書兼情婦の清子に(時にはその娘にまで)理不尽な暴力を浴びせまくるDV小説家です。
この人でなし男の魂の救済が小説の縦軸となるのですが、あまりに人でなしなので、皆この設定を避けて通ろうとします。
単発テレビの主役は、プリズンホテルにヘッドハンティングされたホテルマンでした。
テレビシリーズの時は、男女を入れ替える(木戸孝之助が女で秘書が男)という荒業を披露(政治判断としては正解ですが、ドラマ作りとしては論外)。
で、今回のオリジナル・ビデオ版はと言うと、DV男としての木戸孝之助は登場するものの、主役はホテルマンの不良息子という「誰?」な選択。
本来あるべきエピソードはなくなるわ、いらん話が追加されるわで原作ファンには辛い作品です。
この小説の魅力を正面切って描いてくれる無骨な監督はいないのでしょうか。