こういう羽毛のようにとらえ所のない映画を何気に作っちゃうからこの人は侮れません。
「うつせみ」(2004年/キム・ギドク監督)
留守宅を見つけては不法侵入してメシ喰ったり風呂入ったり寝たりして暮らしている謎の青年テソク。
ある日、無人と思って入った豪邸。しかし、そこには夫のDVに怯える人妻ソナが。
夫の独占的欲求と暴力を目の当たりにしたテソクはソナを連れて当て所の無い逃避行へ。
全編通して台詞らしい台詞無し。昔のATGっぽい香りがします。近作では瀬々監督の「肌の隙間」が近しいでしょうか。
ただ、決定的な違いは、日本人が撮るとどうしても土着感・閉塞感満点になる題材なのに、この人が撮ると何故か透明でやさしくて静謐感溢れる仕上がりになる、という事。
あのラストは凡人にはちょっと思いつかないです。
普通なら、ソナが連れ戻されて終わるか、再び逃避行に走るかの2択でしょう。
まさか一気にファンタジー(?)にまで昇華させてしまうとは。恐るべしキム・ギドク。
「うつせみ」とはなんとも儚い邦題じゃのう、と思いましたが観て納得。原題は「3-IRON」。理由は観てのお楽しみですが、センスが良いのか悪いのかは判断つきかねます。
※ご参考