デストピア経典~曼荼羅畑でつかまえて(三代目)

B級カルトな特殊映画、ホラーにアニメに格闘技、酒にメタルにフィギュアに銃。日頃世間ではあまり顧みられる事のないあれやこれやを過剰なる偏愛を以てご紹介いたします。

“しかめっ面”のヒロイン登場。 ぜんぶ、フィデルのせい

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フィデル”と聞いて即座にフィデル・カストロが思い浮かばない私は社会科赤点です。

ぜんぶ、フィデルのせい」(2006年/ジュリー・カヴラス)

題材に70年代&キョーサン主義を持ってくるあたり、血は争えないなあ、と感慨ひとしおですが、実はそんな事はどうでもよくて(笑)。

両親が共産主義に染まった為に生活環境が激変した9歳の少女アンナ。彼女の成長の物語です。

描写が実に細かく(それだけ脚本が練られているという事)、印象深いカットは山ほどあるのですが、一番グッと来たのは、授業で取り上げられた寓話。

人間の下から逃げ、山に入ったが狼に喰われてしまった山羊の話。

先生の解説は「恩を仇で返したから罰があたった」。でもアンナの理解は違う。

「人の下にいれば餌はもらえるけど、鎖で繋がれている。山羊には二つの選択肢があった。繋がれて暮らすか、自由になるか。山羊は自由を選んだんです」

私はこういう話に弱い。

“しかめっ面”のヒロイン、アンナ(ニナ・ケルヴェル)のキュートさがこの映画のキモではありますが、個人的MVPは弟フランソワ役のパンジャマン・フイエ。

何をするわけでもないのですが、話がある一方に偏ろうとするときに絶妙のタイミングで揺り戻しをかける「安全弁」のような役目を果たしています。

娘の監督デビュー作を父コスタ・ガヴラスはどう評価したのでしょう。「合格」・・ですよね。