『人は本来善良な生き物よ』
『都市が機能してればね』
この霧は監督の悪意の象徴なのかもしれません。
「ミスト」(2007年/フランク・ダラボン監督)
謎の霧に閉ざされた田舎町。そして霧の中には得体の知れない「何か」が蠢いていた。
キング原作+ダラボン監督だからって「ショーシャンク」や「グリーンマイル」を期待してはいけませんよ。
『人間は野蛮な生き物さ。二人以上の人間が集まれば最後には殺しあうんだ』
霧を避けてスーパーに篭城する人々。それは9.11後のアメリカにしか描けない暗黒鳥獣戯画。
もう「不快」としか言いようのない醜い展開が次から次へ。
住民を煽動する狂信的キリスト教原理主義者のおばはん(マーシャ・ゲイ・ハーデン)が主役(トーマス・ジェーン)を喰う大迫力。
このおばはんが××された時、アメリカの劇場は拍手喝采だったそうですが、あれは君たちのメタファーなんでないかい?
ラストは確かに衝撃(こんな酷いオチ観た事ない)ですが、まあ蛇足です。
この直前、主人公が見上げる霧の中を悠然と歩いていくATATスノーウォーカーとデーモンが合体したような巨獣。神々しいがまでの悪夢。この映像こそこの映画最大の見所でしょう。
見終わった時は「うわぁ、二度と観たくねえ」と思いましたが1日経ったら無性にまた観たくなりました。
「そりゃ明かり点けたら虫寄ってくるに決まってるべ」とか「いやその状況になったらダッシュで撤退だろ」とか特撮を魅せたいがために人間の動きが不自然に緩慢になってるという難点はありますが、「心に残る」作品ではあります。