渋い・・。
監督名伏せられたら多分当てられない。
(2007年/デビッド・クローネンバーグ監督)
在英ロシアン・マフィアという「ゴッドファーザー」ワールドですが、視点を一般女性に据えているので、エライこと観やすくなっています。
助産婦アンナ(ナオミ・ワッツ)の勤める病院に担ぎ込まれた14歳の妊婦タチアナ。
その両腕には無数の注射針の痕。かろうじて赤ん坊は助けましたがタチアナは死亡。残されたのはロシア語で書かれた日記とロシア料理レストランのショップカードのみ。
レストラン・オーナーは好々爺然とした温和そうなおじい様。
『タチアナ・・記憶にないですねえ。申し訳ありません』
『そうですか。残念です。でも日記が翻訳できれば住所くらい分かるでしょう』
『…日記?!』
彼こそ裏で人身売買組織を操るロシアン・マフィアのドン、セミオン(アーミン・ミューラー=スタール)・・最悪の出会い。
ナオミ・ワッツ・・不思議な女優です。演技が上手いのか下手なのか、華があるのかないのか、実に微妙。
実質主役はファミリーのドライバー兼始末屋ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)。「ヒストリー・オブ・バイオレンス」に次いでクローネンバーグ連続登板。
グッとスリムになって渋さ倍増。サウナでのマッパ・バトルは男なら「大丈夫か、ぶつけるなよ」と手に汗握る名シーン。
喉一文字とか眼球一直線とか全身ささらもさらとか素敵なシーン満載ですが、全体の印象は“雰囲気系”。ロンドンの気候のせいか画質もしっとり。
一気に端折った後半と“特にオチまで語る必要はないだろ”的にすこーんとぶった切ったエンディングはちょいと戸惑いましたが、これはこれでアリかな、と。
※「ヒストリー・オブ・バイオレンス」→2008年5月11日