うむむ。黒沢初期の傑作という触れ込みだったので期待して観たのですが・・。
「地獄の警備員」
(1992年/黒沢清監督)
殺人罪で起訴されたものの心身喪失で無罪となった元力士・富士丸(松重豊)が、とある大手企業の警備員として社会復帰して大暴れ。
構図や色彩などは「ああ、黒沢だなぁ」感満開なのですが、テンポと脚本が酷すぎ。
主役の秋子(久野真紀子)が初出勤時にタクシーで渋滞に巻き込まれるという描写がまず変。
君、これから毎日通うんだろ、この会社。タクシー出勤するつもりなのかい?
後半、富士丸が秋子に「お前は突然、俺の前に舞い降りた」とか言っていますが、だったら、二人の出会いのシーン(少なくとも富士丸目線で秋子を捉えるカット)がなきゃ駄目でしょ。
秋子の所属する12課は大企業の離れ小島という設定ですが、それにしても大企業の自社ビルにしては社員少な過ぎ。廊下暗すぎ(わざとでしょうけど)。
歩く治外法権・人事部兵頭(長谷川初範)も扱いが中途半端。兵頭と秋子のロマンスが描かれるわけでもないのに、ラストで兵頭の妻子が出てきても「ん、だから?」って感じですし。
富士丸は“喋るマイケル・マイヤーズ”みたいにしたかったのかも知れませんが、喋ったら不条理で押すのは無理。
黙って謎のまま通すか、喋って哲学者にするかどっちかにしてもらわないと。
全体的に無駄なシーン、カット多すぎ。途中何度も挫けそうになりました。
狭い廊下で馬乗りという「振りかぶり難い」体勢から最短距離で鉄パイプを相手の側頭部にふり降ろす“脇の〆具合”には感心しましたが・・。
「ディレクターズ・カンパニー」のテロップ懐かしす。
※関連:「CURE キュア」→2008年8月21日、2009年6月11日