市川崑監督と言えば、黒地にでっかい極太明朝体。
しかし、これは中央にポツンと小さく二文字。
「幸福」(1981年/市川崑監督)
スタッフ、キャスト・クレジットはゴシック系ボールド。もうこのフォントだけで「いつもとは違うシャシンを撮る!」という監督の意気込みが伝わってきます(笑)。
最大の特徴は「銀残し」。シルバー・カラーと呼ばれる限りなくモノクロに近いカラー。
公開から28年。一度もソフト化された事のない幻の作品が遂に当時の発色そのままにDVD化されました。
原作はエド・マクベインの「クレアが死んでいる」(原題は「LADY!LADY! I DID IT」。“姉ちゃん姉ちゃん、俺やったよ”って感じ?)。
門外不出だった理由は、単にエド・マクベインと交わした契約に「ソフト化」の文字がなかったから、のようです(出典:映画秘宝09年12月号)。
女房に逃げられ、幼い子供二人を抱えてオロオロする刑事・村上(水谷豊)。書店で起きた拳銃乱射事件の死体の中に婚約者を見出す同僚刑事・北(永島敏行)。
公開当時は「地味で暗い」という印象しかありませんでしたが、年をとったせいか今観ると沁みる沁みる。
出演者全員(子役含む)の抑えた(棒読みとも言う)演技に戸惑いますが、この作品の芸風と割り切ればこれも味わい。
市川作品という事で、加藤武が「あの役」そのままでゲスト出演しています。