我々世代にとっては最早「デ・パルマ/パチーノ版」が“オリジナル”で、ホークス版は“歴史の教科書”な感じでしたが、いやいやいや。
様式美を極めたギャング映画の傑作でした。ホークスさん、ごめんなさい。
「暗黒街の顔役」(1932年/ハワード・ホークス監督)
設定(禁酒法時代のギャング)は異なりますが、話の展開は大筋「スカーフェイス」と同様。トニーはモンタナではなくカモンテ。演じるはポール・ムニ(←細面なベルシオ・デル・トロな感じ)。
執拗に反芻される×印(クロス)のイメージが全編に。
十字の道路標識と死体に被るその影、死体の数だけ並ぶ×型の格子、ボーリングのストライクマーク、10号室を示すルームナンバーX等々。
敵対組織最期の一人をボーリング場で暗殺した時に、投げたボールが9ピンを倒し、残った1ピンが錐揉みのように回転して倒れるというカットには唸りましたね。
時間経過も「日めくりをマシンガンが弾き飛ばす」という凝った絵柄。
他にも香水のビンを拳銃のように握ってしまう(暗殺を決意する)手の描写や、無いはずの拳銃の引き金を引こうとする指の動きとか、芸が細かい。
これ観ると、最近の監督が「スタイリッシュ」の意味を履き違えているのが良く分かります。
窓から見上げるネオンサインは“THE WORLD IS YOURS”。
ホークス(製作)のオリジナル物体Xは正直、時代を感じずにはいられませんでしたが、こっちは現在でも十分通用します。
※参考:「スカーフェイス」→2008年1月18日
「遊星よりの物体X」→2008年12月17日