正式なタイトルは「去年の秋、四つの都市で同じ拳銃を使った四つの殺人事件があった。今年の春、十九歳の少年が逮捕された。彼は連続射殺魔とよばれた」(句読点筆者)。
去年とは1968年。少年とは永山則夫。
警察庁による名称は「警察庁広域重要指定108号事件」。一般的な呼称は「永山則夫連続射殺事件」。
「略称・連続射殺魔」(1969年/足立正生監督)
実録ものと言うと「TATOO(刺青)あり」(三菱銀行人質事件)とか「凶弾」(瀬戸内シージャック事件)とか「連続殺人鬼・冷血」(勝田清孝事件)などを思い浮かべてしまいますが、これは他の実録ものとは大きく一線を画します。
いや一線なんてもんじゃないのですが、まずは監督、足立正生の活動をおさらいしておきましょう。
71年にカンヌ映画祭の帰路、若松孝二とパレスチナに渡り、日本赤軍並びにPFLPのゲリラ隊に参加。「赤軍-PFLP・世界戦争宣言」を撮影・制作。
74年以降は、一兵卒として重信房子率いる日本赤軍に合流、国際指名手配。
97年に逮捕、レバノン・ルミエ刑務所に拘留。2000年3月刑期満了、身柄を日本へ強制送還(この辺りWikipediaから抜粋)。
本作は足立がパレスチナに渡る前に撮った「風景論」による実験映画です。
ただひたすら永山則夫が見たであろう風景だけをカメラに収めていく・・。
役者無し(当然台詞も無し)。永山の流転に関する必要最低限の情報がナレーションで語られるのみ。現場音もゼロ。サックスやフルートによるノイジーでインプロな伴音だけが全編を彩っています。
これが1969年の日本の風景か・・って、ここ横浜大勝館じゃね? このテケツ、このロビー、俺の記憶より大分綺麗(当たり前だ)ですが、おっと向かいに千代田劇場もある、間違いありません、横浜大勝館です。
そうか、こんな感じだったのか・・。嗚呼すみません、懐かしくてつい頭が青春プレイバックしてしまいました。
風景論・・ワイドショーを嘲笑う崇高さが堪りません。
★ご参考