『元々風通しの悪い古い農家だったんだ』
『窓を全部毛布で覆って、照明だけで明かりを調整したんだよ』
『外の気温は40度を超えていたな。中は・・』
『衣装は1着しかなかったからね。2週間着っぱなしさ』
『ソーセージは2週間、同じテーブルの同じ場所にあったよ』
『隣の部屋には動物の骨が山積み。生きたニワトリもいたな』
『チーズは照明を当てたとたんに腐り始めた。皆外に出ては吐いていたよ』
『一体いつ終わるのか。気が狂いそうだった』
真夏に締め切った屋内で照明焚いて、中は腐った食い物と動物の死骸と汗の臭いで充満。これ以上の地獄、ちょっと思いつきません。
「悪魔のいけにえ/ファミリー・ポートレイト」
(1988年/ブラッド・シェラディ監督)
「悪魔のいけにえ」の出演者たちが、あの時の思ひ出を語るドキュメンタリーです。
察するにスタッフ・キャスト全員が発狂寸前だったのではないでしょうか。
このやり場のない理不尽な怒りが全てマリリン・バーンズに向けられたようで(ご愁傷様です)。
『最初は嫌だったんだが、だんだん殴るのが楽しくなってきて、OKが出た時、彼女は気絶していたな』(ジム・シードウ)
『早くこの女を殺して撮影を終わらせようと思ったよ』(ガンナー・ハンセン)
本編がきっちりと構図を据えた映画的な撮影と演出をしているにも関わらず、ドキュメンタリーのように見えてしまうのは、このような「洒落にならない現場の事情」があったからかもしれません。
出演者が誰一人役者として成功していない、という事実も含め、実に恐ろしい映画です。